縁化ユカリシウム

文字数 779文字

<縁化ユカリシウム(EnYl)>
主に血中に含まれ、出逢いや運命を感じさせる成分を大脳に運ぶ媒体。
基準値は一般男性で320、一般女性で380程度。
性質:縁(えん)の中でも正縁(せいえん)の一種。(良悪は宗教上の分類に該当)基本無臭だが、個人差で縁臭を持ち惹かれ合うこともある。血縁構造外との子宮粘膜性結合によって新個体(胎児)を生成する。
研究:運命感度と縁化ユカリシウムは個体の年齢層と関係があり、11歳~22歳までは平均値280を維持しているが、23歳を境に数値は著しく低下する。(2016年度調べ)江西大学の研究では、近年の晩婚化に伴って23~38歳の運命感度は10年前のおよそ74%に推移しているとの結果が出ている。
出典:『縁化ユカリシウムと健康寿命』縁文化学新書(2012年5月)
   『絶縁化大国ー孤立した日本ー』江西御縁文庫(2013年1月)
関連:良縁悪縁
   類人縁


「縁化ユカリシウム」とは血液に含まれる成分で、
運命を感じた相手を目の前にすると、目の奥に小さくハートを浮かび上がらせる。
原理は…ときめいた相手の姿を捉えようと眼球に血液が多く送り込まれるからだとかなんとか。
学者じゃないのでよくわからない。

どうしてこんな説明口調で始まったのかと言うと、僕は今、意中の彼女とデートの真っ最中だからだ。
そしてさっきデパートの前を通り過ぎた時、ほんの一瞬だったが、
彼女の目の奥にハートの断片が見えたからなのだ。

お別れのとき、僕を見る彼女の目にハートが確かに浮かび上がった。
「あのその、目に、ハートが浮かんでますよ。つまり君は…」
「え、出ちゃってる?やだっ、バレちゃうのね」
僕は内心にやりとした。
「ブランド物にね、目がなくってぇ…縁とでも言うのかしら、どれも欲しくなっちゃうの」

振り返ると、ショーウィンドウの奥でプラダのバッグがキラリと西日を浴びて輝いた。
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