ランタンの実

文字数 257文字

押し寄せる熱波に億劫になる頃、田舎の集落では恒例の祭事の準備にとりかかっていた。
「蘭担祭」ではこの集落でしか育たないランタンの実を各々の軒下に吊るし、先祖を祀る。
ランタンの実は、暑さの引く夜になると、ぽぉっと蛍光し、
その灯りが並んだ光景は、まるで通り道を示すように、還る魂の足元を照らす。

祭りから帰る夜道では、大人はランタンの実を詰めた提灯を持ち、
子どもはランタンのヨーヨーの紐を指からぶら下げていた。

翌日、お供えしたランタンの実は、囲炉裏で軽く焼いた後、砂糖醤油に浸され、
夕飯を待てない子どもたちの腹を満たした。
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