誤縁性肺炎

文字数 388文字

医者は耳から聴診器を外して私に告げた。
「誤縁性肺炎ですね」
「誤縁性?」
「恋をすると胸がドキドキするでしょ?その反対に、悪縁の場合は呼吸器が炎症を起こすんです」

なるほどと納得したのは、お察しの通りの心当たりがあるからだ。
先日仕事終わりに引っ掛けたバーで会った女に一目ぼれしたのだ。
残業を言い訳に何度か通っていると、次第に妻と会話すれば咳が出て、
手料理を食べれば忽ちむせてしまうようになった。
恋は心の病ならず、身体の病と言うことか。
全く、ありがたいんだか、お節介なんだか。

診察の翌々晩。
意を決した俺は、彼女の連絡先をあらゆる履歴から削除した。
だが1、2週間しても症状に改善が見られなかった。
文句を言うため、再び医者を訪れた。

「このヤブ医者っ。私は心当たりの女と縁を切ったというのにちっとも治らなかったぞ。」
「つい先日原因が判明しましたよ。実はあなたの奥様がこちらに来られましてね」
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