第7話 ファンって何なんだ?
文字数 4,068文字
「とりあえず、ソファーに座っててください」
まだ困り顔のミカを部屋に入れ、綺麗めなグラスに冷蔵庫から出したペットボトルのお茶を注ぐ。
「サトルくん、ちょっとコレを見て……」
ミカは、和柄の袋から取り出した、A5くらいの大きさの薄い本のようなものを開ける。中には30代くらいに見えるややイケメンの写真と、プロフィールが入っていた。
「ウチのおばあちゃんが、さっき置いてったの。この前、電話で断ったんだけど、30分自転車で走ってきて直接、押し付けられちゃった」
サトルは、リビングテーブルにお茶の入ったグラスを置き、手渡されたお見合い写真を眺める。
「初めてこういうの見ました。なかなかカッコ良 い人じゃないですか」
「お見合いなんてしたくないよ。その人、有名企業の係長だって。こんな女と釣り合うわけないし、独り身なのに一軒家建てて猫と暮らしてるらしいの。絶対変な人だわ」
「いや……別にそれは悪いことではないような気がしますけど。31でそのステータスで独身かぁ。あっ、離婚したとか?」
ミカは首を横に振る。
「ずっと独身だって。仕事が忙しくて、彼女を作る暇もないらしいわ。それで、知り合いのツテでおばあちゃんにコレが回ってきたんだってさ」
サトルは、プロフィールに気になる単語を見つけた。
「趣味が野球鑑賞で、推し球団がレインズになってますね」
「常勝球団が好きなんでしょうね。効率良く勝ち試合ばっかり見たいならレインズでいいもの」
……どうしてこんなに否定的なんだろう。ここは突っ込んで訊 くべきか。あと、お願いがあるって言ってたけど。
サトルは床に座ったまま姿勢を正し、ミカと目を見合わせる。
「ミカさん、お願いって何ですか?」
ミカは俯 いて、目を閉じて眉に皺 を寄せる。
「……明日、おばあちゃんがまた来る。その時に、彼氏のフリをして欲しい。嫌だとは思うけど、頼めるのがサトルくんしかいないの」
ディスプレイから、ギガントパンサーズの勝利を告げる実況の声が流れた。それどころではなく、サトルは腕を組んで悩む。
ミカのおばあさんに会う、それも、彼氏のフリをして。おそらく、お見合いを断るためなのだろうが……。ミカのことをほとんど知らないし、そもそもサトルは嘘をつくことがあまり好きではない。
「やっぱり、無理だよね。忘れて忘れて。自分で頑張って断るから」
「いえ。やりましょう」
サトルはキメ顔で、にやりと笑みを浮かべる。
「一回断ってるのに、コレを持ってきたんですよね。おばあさんがどんな人か知りませんけど、すぐに折れるとは思えません。ミカさんが困ってるのを見過ごしたままじゃ、僕は日曜日を満喫できないです」
ミカが、ホッとしたような表情に変わる。
「ホント?! 断られると思った。だって、私のこと、全然知らないよね」
「だから、教えてください。今日はギガントパンサーズが2連勝したことですし、ビールでも飲みながら、明日の作戦会議といきましょう」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日の午前11時、ミカのおばあさんは元気に自転車をこいでやって来た。
サトルはミカの部屋で待機していて、あえて玄関のドアを開ける役を担った。
「初めまして。サトルと申します」
おばあさんは、なめるように下から上まで彼を眺め、小さく唸 った。一応、まともに見えそうなジャケットを着て、下はチノパンにしておいた。この装備以外はTシャツにジーパンか、ジャージくらいしか持ってない。はたして、おばあさんのお眼鏡にはかなったのだろうか。
「おたくがミカの今の彼氏か。……腹が減ったから、話はお店でしようじゃないか」
自己紹介もしてくれず、おばあさんはそそくさとアパートの階段を下りて行く。サトルがミカの方 を向くと、彼女は手を合わせてゴメンなさいのポーズをした。おばあさんはこんな感じの人なのだろう。
歩きながら、幾つかの質問をされた。
ミカの交通事故のことも、今の仕事のことも、昨日の打ち合わせが功を奏して、話を合わせることに成功した。なんだか本当にミカの事を知っているのか、尋問を受けているようで、サトルは背中に嫌な汗をかきながら答えていく。
この不思議な一行は意外にも、近くのロードサイドのファストフード店に入る。おばあさんはエビカツバーガー、サトルはダブルチーズバーガー、ミカはてりやきバーガーを、あと、ポテトとナゲット、水も注文した。
数分も待たず注文の品が用意され、ふたつのトレイに乗せて席に着いた。
サトルはミカに小声で囁 く。
「僕は何て呼べばいいのかな」
「おばあさま……? うーん。私と同じでおばあちゃん、かな」
「ツネ、でいいよ。おたくの祖母じゃないからね」
どうやらお耳が良いようで。サトルは苦笑いを浮かべ、自分から話をすることにした。
「えっと、ミカさんとはギガントパンサーズのファンということで意気投合して、お付き合いをさせていただいてます」
「ギガントパンサーズねぇ。よくもまあ、あんな弱いチームを応援するもんだね。疲れるだろうに」
「今は歯車が噛み合ってないけど、その内、勝てるようになると思います」
「それはないよ。おたく……サトルさんと言ったかね。今のギガントパンサーズの得点圏打率を知ってるかい?」
……得点圏打率か。悪いのは百も承知だが、数字までは知らないな。
「2割を切ってるんだよ。さらに言えば、得点自体がリーグでダントツの最下位。昨日みたいに8点も取れる試合なんて、年間に幾つもないよ。野球は点取りゲームだ。点の取れないチームを応援してても楽しくないだろう」
サトルは、身を乗り出して真剣に答える。
「そんなことないです! あのチームを応援してたから、ミカさんと親しくなれました。それに、弱いから応援しないっておかしいです。僕は伊月選手が大好きだし、若手の選手が成長していく姿を楽しむとか、応援の形って色々だと思います。強いだけ、スター選手がいるってだけならレインズのファンになればいいんでしょうけど、僕はレインズのことが好きになれません!」
ミカが慌てて、サトルを宥 める。
「サトルくん、そんなに熱くならないの。おばあちゃんも、人の好きなチームのことを貶 すのは良くないと思うよ」
「ふーむ。なら、サトルさんは、ミカのどういう所に惚れたんだい? ギガントパンサーズが好きって女性なら、他にも少しはいるだろう」
サトルは、落ち着くためにいったん水を飲む。冷静さを失って綻 びが出ないようにしなければ。
「笑顔が素敵です。それに、ギガントパンサーズが連敗してて、僕が気落ちしてた時は、遊びに誘ってくれました。一緒に応援してると、独りの時よりもずっと楽しいです。僕はミカさんのことが好きです」
ミカが赤面する。ツネは、その顔をちらりと見て、ゆっくりと頷 いた。
「そうかい。人の好き嫌いにちょっかい出すつもりはなかったんだけどね。どうやら、少なくともサトルさんは本当にミカのことが好きみたいだから、見合いの話はいったん断っておくよ」
ミカが嬉しそうにツネの手を取る。
「うん。ゴメンね、おばあちゃん。せっかく足を運んでもらったけど、私はその人とは会えないの」
「いいさ。割と良 い人だと思ったけどね。昔と違って、今はやっぱり自由恋愛の時代なんだろうねぇ」
少しガッカリした様子で、ポテトを頬張るツネに、サトルは凄く気になっていたことを訊 く。
「でも、なんでハンバーガー屋さんなんですか? もっと落ち着いて話の出来るお店は、他にもあったと思うんですけど……」
ミカが、軽くサトルの肩をトントンと叩く。
「おばあちゃんね、家では裏の畑で採れた野菜中心の生活なの。おっきな畑で。だから、外に出た時はジャンクな食事をしたいんだって」
「旦那が揚げ物苦手でね。今日は絶対、ここにしようと思って来たんだよ」
……あれ? もしかして、単に外で食事したかっただけ?
食事を終えて、ファストフード店を後 にする。
さっきまで引いて来ていた自転車に乗り、ツネはふたりに言う。
「サトルさんの気持ちは分かったから、本当に付き合うようになったら家 に遊びに来な。美味しい野菜料理をご馳走してあげるよ」
「ありがとうございま……あれ?」
「ミカの顔を見てたら分かるよ。おたくらは結構お似合いだと思うけどね。まあ、ゆっくりと頑張 んなさい」
それだけ言ってにやりと笑うと、手を振りながらツネは自転車をこいで去って行った。
呆然と見送るサトルとミカ。
「なんだ。バレてたんですね、付き合ってないこと」
「私がよそよそしかったからかな。だって、久しく男の人と付き合ってないから、どんな態度すれば良 いのか忘れちゃったもの」
サトルは内心驚いたが、表情には出さずに話題を変えることにした。
「そ、そういえば、ツネさんって何でギガントパンサーズの得点圏打率とか知ってたんですか? なんだかファンとも少し違う感じでしたけど」
「おばあちゃんはバリバリ、ネットを使いこなして、全球団のスコアを頭に叩き込んでるの。ボケ防止なんだって。あと、競馬もやるし、麻雀もやるよ」
なんという活動的な。推しである伊月選手の打率すら曖昧にしか覚えていないサトルとは大違いだ。
「っと、もうデイゲーム始まってますね。帰って観なきゃ」
サトルが歩き出すと、袖を掴まれて引っ張られた。
「ねぇ……。私のこと好きって言ったの、演技?」
サトルは、ミカの目を見て、はっきりと答える。
「好きですよ。僕はミカさんが好きです。好きになっちゃいました」
「私はどうしたらいい? 今日も、一緒に試合観たいって言ったら、迷惑?」
「全然、迷惑なんかじゃないですよ。……手は出さないので、一緒に試合、観ましょう」
「手、出さないんだ。プラトニック・ラブってやつかな」
「ツネさんも言ってたけど、ゆっくりでいいです。ゆっくりとお互いのこと、知っていきたいんです」
ミカは、サトルの袖から手を離して、微笑む。
「ありがと。じゃあ、まずはギガントパンサーズ仲間としてよろしくね」
サトルも、笑顔で元気に声を出す。
「はい、よろしくお願いします!」
まだ困り顔のミカを部屋に入れ、綺麗めなグラスに冷蔵庫から出したペットボトルのお茶を注ぐ。
「サトルくん、ちょっとコレを見て……」
ミカは、和柄の袋から取り出した、A5くらいの大きさの薄い本のようなものを開ける。中には30代くらいに見えるややイケメンの写真と、プロフィールが入っていた。
「ウチのおばあちゃんが、さっき置いてったの。この前、電話で断ったんだけど、30分自転車で走ってきて直接、押し付けられちゃった」
サトルは、リビングテーブルにお茶の入ったグラスを置き、手渡されたお見合い写真を眺める。
「初めてこういうの見ました。なかなかカッコ
「お見合いなんてしたくないよ。その人、有名企業の係長だって。こんな女と釣り合うわけないし、独り身なのに一軒家建てて猫と暮らしてるらしいの。絶対変な人だわ」
「いや……別にそれは悪いことではないような気がしますけど。31でそのステータスで独身かぁ。あっ、離婚したとか?」
ミカは首を横に振る。
「ずっと独身だって。仕事が忙しくて、彼女を作る暇もないらしいわ。それで、知り合いのツテでおばあちゃんにコレが回ってきたんだってさ」
サトルは、プロフィールに気になる単語を見つけた。
「趣味が野球鑑賞で、推し球団がレインズになってますね」
「常勝球団が好きなんでしょうね。効率良く勝ち試合ばっかり見たいならレインズでいいもの」
……どうしてこんなに否定的なんだろう。ここは突っ込んで
サトルは床に座ったまま姿勢を正し、ミカと目を見合わせる。
「ミカさん、お願いって何ですか?」
ミカは
「……明日、おばあちゃんがまた来る。その時に、彼氏のフリをして欲しい。嫌だとは思うけど、頼めるのがサトルくんしかいないの」
ディスプレイから、ギガントパンサーズの勝利を告げる実況の声が流れた。それどころではなく、サトルは腕を組んで悩む。
ミカのおばあさんに会う、それも、彼氏のフリをして。おそらく、お見合いを断るためなのだろうが……。ミカのことをほとんど知らないし、そもそもサトルは嘘をつくことがあまり好きではない。
「やっぱり、無理だよね。忘れて忘れて。自分で頑張って断るから」
「いえ。やりましょう」
サトルはキメ顔で、にやりと笑みを浮かべる。
「一回断ってるのに、コレを持ってきたんですよね。おばあさんがどんな人か知りませんけど、すぐに折れるとは思えません。ミカさんが困ってるのを見過ごしたままじゃ、僕は日曜日を満喫できないです」
ミカが、ホッとしたような表情に変わる。
「ホント?! 断られると思った。だって、私のこと、全然知らないよね」
「だから、教えてください。今日はギガントパンサーズが2連勝したことですし、ビールでも飲みながら、明日の作戦会議といきましょう」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日の午前11時、ミカのおばあさんは元気に自転車をこいでやって来た。
サトルはミカの部屋で待機していて、あえて玄関のドアを開ける役を担った。
「初めまして。サトルと申します」
おばあさんは、なめるように下から上まで彼を眺め、小さく
「おたくがミカの今の彼氏か。……腹が減ったから、話はお店でしようじゃないか」
自己紹介もしてくれず、おばあさんはそそくさとアパートの階段を下りて行く。サトルがミカの
歩きながら、幾つかの質問をされた。
ミカの交通事故のことも、今の仕事のことも、昨日の打ち合わせが功を奏して、話を合わせることに成功した。なんだか本当にミカの事を知っているのか、尋問を受けているようで、サトルは背中に嫌な汗をかきながら答えていく。
この不思議な一行は意外にも、近くのロードサイドのファストフード店に入る。おばあさんはエビカツバーガー、サトルはダブルチーズバーガー、ミカはてりやきバーガーを、あと、ポテトとナゲット、水も注文した。
数分も待たず注文の品が用意され、ふたつのトレイに乗せて席に着いた。
サトルはミカに小声で
「僕は何て呼べばいいのかな」
「おばあさま……? うーん。私と同じでおばあちゃん、かな」
「ツネ、でいいよ。おたくの祖母じゃないからね」
どうやらお耳が良いようで。サトルは苦笑いを浮かべ、自分から話をすることにした。
「えっと、ミカさんとはギガントパンサーズのファンということで意気投合して、お付き合いをさせていただいてます」
「ギガントパンサーズねぇ。よくもまあ、あんな弱いチームを応援するもんだね。疲れるだろうに」
「今は歯車が噛み合ってないけど、その内、勝てるようになると思います」
「それはないよ。おたく……サトルさんと言ったかね。今のギガントパンサーズの得点圏打率を知ってるかい?」
……得点圏打率か。悪いのは百も承知だが、数字までは知らないな。
「2割を切ってるんだよ。さらに言えば、得点自体がリーグでダントツの最下位。昨日みたいに8点も取れる試合なんて、年間に幾つもないよ。野球は点取りゲームだ。点の取れないチームを応援してても楽しくないだろう」
サトルは、身を乗り出して真剣に答える。
「そんなことないです! あのチームを応援してたから、ミカさんと親しくなれました。それに、弱いから応援しないっておかしいです。僕は伊月選手が大好きだし、若手の選手が成長していく姿を楽しむとか、応援の形って色々だと思います。強いだけ、スター選手がいるってだけならレインズのファンになればいいんでしょうけど、僕はレインズのことが好きになれません!」
ミカが慌てて、サトルを
「サトルくん、そんなに熱くならないの。おばあちゃんも、人の好きなチームのことを
「ふーむ。なら、サトルさんは、ミカのどういう所に惚れたんだい? ギガントパンサーズが好きって女性なら、他にも少しはいるだろう」
サトルは、落ち着くためにいったん水を飲む。冷静さを失って
「笑顔が素敵です。それに、ギガントパンサーズが連敗してて、僕が気落ちしてた時は、遊びに誘ってくれました。一緒に応援してると、独りの時よりもずっと楽しいです。僕はミカさんのことが好きです」
ミカが赤面する。ツネは、その顔をちらりと見て、ゆっくりと
「そうかい。人の好き嫌いにちょっかい出すつもりはなかったんだけどね。どうやら、少なくともサトルさんは本当にミカのことが好きみたいだから、見合いの話はいったん断っておくよ」
ミカが嬉しそうにツネの手を取る。
「うん。ゴメンね、おばあちゃん。せっかく足を運んでもらったけど、私はその人とは会えないの」
「いいさ。割と
少しガッカリした様子で、ポテトを頬張るツネに、サトルは凄く気になっていたことを
「でも、なんでハンバーガー屋さんなんですか? もっと落ち着いて話の出来るお店は、他にもあったと思うんですけど……」
ミカが、軽くサトルの肩をトントンと叩く。
「おばあちゃんね、家では裏の畑で採れた野菜中心の生活なの。おっきな畑で。だから、外に出た時はジャンクな食事をしたいんだって」
「旦那が揚げ物苦手でね。今日は絶対、ここにしようと思って来たんだよ」
……あれ? もしかして、単に外で食事したかっただけ?
食事を終えて、ファストフード店を
さっきまで引いて来ていた自転車に乗り、ツネはふたりに言う。
「サトルさんの気持ちは分かったから、本当に付き合うようになったら
「ありがとうございま……あれ?」
「ミカの顔を見てたら分かるよ。おたくらは結構お似合いだと思うけどね。まあ、ゆっくりと
それだけ言ってにやりと笑うと、手を振りながらツネは自転車をこいで去って行った。
呆然と見送るサトルとミカ。
「なんだ。バレてたんですね、付き合ってないこと」
「私がよそよそしかったからかな。だって、久しく男の人と付き合ってないから、どんな態度すれば
サトルは内心驚いたが、表情には出さずに話題を変えることにした。
「そ、そういえば、ツネさんって何でギガントパンサーズの得点圏打率とか知ってたんですか? なんだかファンとも少し違う感じでしたけど」
「おばあちゃんはバリバリ、ネットを使いこなして、全球団のスコアを頭に叩き込んでるの。ボケ防止なんだって。あと、競馬もやるし、麻雀もやるよ」
なんという活動的な。推しである伊月選手の打率すら曖昧にしか覚えていないサトルとは大違いだ。
「っと、もうデイゲーム始まってますね。帰って観なきゃ」
サトルが歩き出すと、袖を掴まれて引っ張られた。
「ねぇ……。私のこと好きって言ったの、演技?」
サトルは、ミカの目を見て、はっきりと答える。
「好きですよ。僕はミカさんが好きです。好きになっちゃいました」
「私はどうしたらいい? 今日も、一緒に試合観たいって言ったら、迷惑?」
「全然、迷惑なんかじゃないですよ。……手は出さないので、一緒に試合、観ましょう」
「手、出さないんだ。プラトニック・ラブってやつかな」
「ツネさんも言ってたけど、ゆっくりでいいです。ゆっくりとお互いのこと、知っていきたいんです」
ミカは、サトルの袖から手を離して、微笑む。
「ありがと。じゃあ、まずはギガントパンサーズ仲間としてよろしくね」
サトルも、笑顔で元気に声を出す。
「はい、よろしくお願いします!」