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文字数 1,815文字
何だろう。
これ以上こいつに関わるべきじゃない、と、オレは気が付いてはいた。深入りすれば痛い目を見るだろう、と。
なのに、話を続けたいという衝動もあった。
衝動。衝動だ。まるで何かに抗いたいというような。
それは、オレの中の警告を発する部分より奥より湧いている気がした。
「気を付けながら帰ろうとしても、なんか結局、運悪いときは死んじゃうので。なら、一回の探索でなるべく情報集めて。なるべく事故に備えて再挑戦する方が、結局死ぬ回数は少ないかな、というのが今のところ一人旅を続けてみた感触でして」
なんだろう。なんだか『そういうほう』が、どこかほっとする気持ちもあるしな。
いやまて。オレの場合これ、初「対面」なのかね。死体の顔ならもう四回見てるわけだが。
笑われた。くそ。
まあそりゃ、我ながら今のは誤魔化せてなかったけどよ。
……っていうか。笑うんだな、こいつ。まあ、そりゃそうか。
ああ、そうか。
なんとなく、分かってきた。
この世界の神は不完全だ。
魔王が出てきちまったら、「死なない」に勇者に色々背負わせるような。
そのシステムのせいで、こいつは色々歪んでて。
こいつに関わることになって、オレも自分の歪さを自覚して。
でもオレは、歪んでいるけど……まだ、壊れたくはないんだ。
だからこいつにも、壊れててほしくは無かったんだ。
だからこう、さっきから、こいつに人間臭いところを感じると、ほっとするのか。
……それがたとえ、ネガティブな方であっても。