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文字数 697文字

「お前さ……」
 思わず声を上げてしまってから、思った。オレは別に、こいつのことを知るつもりなんか無かったんじゃないのか。……知りたくなんかないと。
 だってオレはこいつとは死体でしか会わない筈だったんだ。
 そしてオレは……こいつの死体を漁って、金を得ているようなものなのだから。
 ……必要な役割とは、思い込もうとしていても。
 それなのに。
「そもそも何で、一人で迷宮入ってるんだよ……仲間はどうした」
 それなのに、一度言葉を交わしてしまえば、常々疑問に思っていたことが、吹き出てくるのを止められなかった。
「あー……いや、うん。居たんですけどね。最初は。普通に。仲間と」
「ただちょっと、三番目くらいの洞窟がですね。ちょっと長くて。それをまる二日くらいかけて一気に攻略したら、『貴方の攻略速度についていけない』と大揉めに揉めて、別れることになりました」
「当たり前だろキッツいわ! てめえは何の疑問もわかなかったのかよそこは!」
「いやでもほら、勇者って。疲れにくくなってるし。仲間も同じ祝福を受けるはずだから、いけるかなって」
…………。
 ああ。
 ずっと、考えないようにはしていた事だ。
 こうして、何回も死んで生き返る、そんなことが平気なやつって、どんなやつなんだろうな、と。
 考えないようにしてたんだ──だってほらやっぱり、そんなの、歪んでるに決まってるだろ。
 でもそれを言ってしまえば。
 こうして、こいつの死体を何度も回収して。その上前をはねることを。
 段々平気になってきて。それで結局、こいつを前にして平気で話しかけられてる、オレは何なんだろうな。

 ──いいや、それも勿論、分かってたさ。
 歪んでる。
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