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文字数 2,865文字
……あ。
そうだ。そうだった。
初めにこいつと話したとき、こいつ、なんつってた?
……だよな。
ああ。そうか。そういう……ことか。
オレは、基本的に無茶やらかしてきたんだろう、そんな自分に特に疑問を持たなかったんだろうこいつが、今更こんなこと言い出すことについても、理解できる気がした。
それから、何故オレが、柄にもなくこいつにこんなに気を使っているのか。
要するに。オレもこいつも、自分がまともじゃない、ロクな存在じゃないってことに、自覚はあって。自分自身ですら、自分のことをまともに扱ってこなかったから。
だからこう、たまーに『人間扱い』されると。調子狂って。柄でもねえこと、する気になっちまうんだよ。
そうして、オレたちは連れ立って歩きだす。
空っぽの棺桶を、引きずって。
そんな、どうでもいい話なんかを、しながら。
気にしろよ、とは、これについてはオレもこいつを責められない。
オレもそういえば、そういうのを気にする余裕は、なくしてることの方が多い。
なんでそこまでして野郎同士で飯を食わなきゃなんねーんだ。思わなくもなかったがまあいいか、と思ってしまったのは。
そういえば、あの店からは残飯と言って押し付けられるだけで、ちゃんと金払って食ったことは無くて。今まとまった金があることを思い出したというのもあるが。
多分一番的確に気分を表すならこうだ。毒喰らわば皿まで。
そんなこんなで、オレたちは無事に遺跡を出て。
町に帰って、風呂に入って、そしてリグノー亭の親父に飯を頼んで二人で食った。
美味い飯を、食った。
ああ、しみじみ、こういうことして無かったなと、思った。
最初に勇者のやつを見たとき、ああなんて人間離れした奴だ、と思ったのに。
なんのことはない、オレだって、自分を人間扱いなんて、してなかったんだと。
その後、オレのもとには、一度だけ出動の時間が訪れた。
……けど。
オレが勇者の死体を拾ったのは、遺跡の魔素が明らかに下がったあと、ボスの部屋から引き返した形跡のある、その場所で。
一応何気なく覗いてみたら、凄まじい死闘の跡がそこにあって。ああ、頑張ったんだな、と感じた。
かくしてこの地の異変は解消され、勇者はまた旅立ち。そして監視塔から、勇者の居場所がオレの回収範囲から外れたことを知らされた。
……一先ずは、お役御免、だ。
わざわざ勇者が引き返してこない限り、もうオレがこの任務を追うことも、あいつと会うことも……ない。
それで、いい。
──数ヶ月後──
何故かオレに、また勇者の捜索と回収が命じられた。例の遺跡で。
オレが勇者を見つけたとき、勇者は元気に、今更この辺の魔物など敵ではないとばかりに絶賛無双中だった。
答えられてから、我ながらツッコムところはそこじゃねーな、と思った。
ああ結局、なんでオレは、こんな奴の世話を焼いてるんだか……。
でもなんか、もうそういうもののような気も、少しした。
(後編、終了。完結)