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文字数 945文字

 一件目の用事を済ませたオレは、そのまま二件目の用事である銀行へと向かった。専用のカウンターに行き、貨幣の入った革袋と、それから金属で装飾された宝玉を差し出す。握りこぶしよりやや小さめ、薄い青緑のその宝玉には、覗き込むと淡く小さな文字が明滅しながらスクロールしているのが分かる。メモリーオーブ、と呼ばれるものだ。
「今回は、結構倒したんだな……」
 そこに浮かび上がっているのはたおした魔物の数。魔物が死んだときに放出される魔素の量を自動的に記録するのがこの宝玉だ。

 魔王が復活して魔物が活発化するこの周期、勇者は魔物を倒せば金が手に入る。ただ勿論、たおした魔物がそのまま金に代わるわけがなくて、こうして記録をもとに銀行で換金を行うわけだ。
(ああ、そうだな……結構倒した。結構倒したのに……なあ)
 銀行の親父が記録に応じた貨幣を並べ、ついで革袋に入っていた貨幣も積んでいくのを、オレは白けた心地で眺めている。
 几帳面に並べられた貨幣たち。それを、──きっちりと二等分にして、親父はその一方をオレに向けて押しやった。
「……こんなに、儲かるものなんだなあ」
 親父が思わずという風に言った言葉には微かに侮蔑が含まれている。……まあ、言いたくなる気持ちはわかるさ。分かるけどよ。
ならあんたがやるか?
 声にはしなかった台詞はしかしきっちり視線には表れてたんだろう。親父は気まずそうに咳払いして視線を逸らす。オレはそれ以上追求しないことにした。
 繰り返しになるが、言いたくなる気持ちはわからなくもないのだ。
 だからと言って嘲りの視線と言葉を受け続けるつもりもない。ただそれだけで。
「じゃあ、こっちの方はこちらで管理しておくから」
 親父がもう半分の貨幣を丁寧にまとめて、勇者の預かり金として必要な手続きを始めていた。オレは何となくそれが不正もなく行われていることを確認すると──このご時世にそんなことするやつ居るはずもないと思いつつ──もうここに用はないとばかりに立ち上がる。

 ……自分の革袋に貨幣をまとめて持ち上げると、それなりの重さを感じた。
 オレは、この町のエリアを担当する回収屋。

 三日以上消息を絶った勇者の行方を捜し、その遺体を回収する役割りだ。
 ……報酬は、その時勇者が所持していた金額の、半分。
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