第3話 茶道部

文字数 505文字

 作法室の扉を開け中に入り、一段高くなった所の襖をゆっくりと開けた。
「ようこそー! いらっしゃーい!」
と、大きな声で迎えられた。
「二人とも入部希望?」といきなり聞かれたが、
「いえ、見学です」とあゆみがすかさず応えた。
「まあどうぞどうぞ」と座布団を勧められた。校内で唯一の畳の部屋である。
 三人の茶道部員に向き合って正座した。
「足をくずしてもいいですよ」と言われたが、正座している三人を前にそれは出来なかった。
「茶道部へようこそ。私が部長の白石わかばです」
と、左の人が言った。そして順に、
「青田かえでです」
「赤松ひなのです」
と名乗った。
「川原あゆみです」
「橘ゆきねです」
と続けた。

 先に桜の花びらの入った羊羹をいただいた。甘く、ほんのり桜の香りが口に広がる。
「美味しい」と思わず口からこぼれた。
 部長の白石わかばがお茶を点てる。音がとても心地よかった。最初に緊張感はあったものの、次第に心が落ち着いていくのが分かった。
 お茶は思ったほど苦くなく、ゆっくりと飲み干すことができた。
「結構なお手前で」
 今習ったことをそのまま繰り返して言った。
 みんなの笑顔がこぼれた。
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登場人物紹介

橘 ゆきね


中学1年生 アマチュア囲碁1級

川原 あゆみ


中学1年生 ゆきねとは小学校からの友だち

白石 わかば


中学3年生 茶道部 部長

青田 かえで


中学3年生 茶道部員

赤松 ひなの


中学3年生 茶道部員

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