第5話 囲碁よろしく
文字数 828文字
「橘さんって、囲碁やってるの?」
「はい」
わかばは返事を待たずに立ち上がっていた。
作法室の奥にある押し入れから碁盤と碁笥 を持ってきた。
ゆきねは目を輝かせていた。碁盤は20センチ以上ある厚みで脚付きと立派で、碁石を入れる碁笥もおそらく桑の木で作られたものだった。プラスチックの安物ではない。
「校長先生がね、他に置くところがないからって持ってきたの。もう随分前だけど」
「触ってもいいですか?」ゆきねはおずおずと訊いた。
「どうぞ」
碁盤の面の滑らかさを確かめ、横、そして脚を触り眺めた。両手で碁笥を取り、重さを確かめ、碁盤の上に戻す。そして蓋を開け碁石を一握り取り出した。丸く膨らんだ石である。プラスチック製ではない。
「これって囲碁の作法なのかな」わかばの心の声がこぼれていた。
「すごく高そうですね」とゆきねは訊いたが、
「そうなの?」とみんなよく分かっていなかった。
「校長先生って囲碁やるんですか?」
ゆきねの問いにわかばが応えた。
「以前やってたんだと思う。最近やらなくなったからって言って持ってきてたから、相手がいないんじゃないかな?」
「じゃあ橘さんが相手できるね」とかえでが言った。
どのくらいの棋力なんだろうと考えながら、ちょっと戸惑ってしまい苦笑いになった。
「みなさんはしないんですか?」と訊いた。
「五目並べくらいならしてたけど」とひなのが言ってみんな笑った。
「校長先生が教えてくれるって言ってたんだけど、そんなにしょっちゅう来るわけじゃないので、そのままだね」とわかばが言うと
「そうだね」とみんなが相槌を打った。
「橘さんが教えてくれるのなら、やってもいいよ」とかえで。
「そ、そうですか…、私でよければ…」
「じゃあ決定!」
「二人とも入部ね」とひなのが続けた。
「えっ、いや、その、私は…」とあゆみは急展開に慌てた。
「大丈夫よ、部活の掛け持ちは二つまでできるから」
と押し切られてしまった。
「はい」
わかばは返事を待たずに立ち上がっていた。
作法室の奥にある押し入れから碁盤と
ゆきねは目を輝かせていた。碁盤は20センチ以上ある厚みで脚付きと立派で、碁石を入れる碁笥もおそらく桑の木で作られたものだった。プラスチックの安物ではない。
「校長先生がね、他に置くところがないからって持ってきたの。もう随分前だけど」
「触ってもいいですか?」ゆきねはおずおずと訊いた。
「どうぞ」
碁盤の面の滑らかさを確かめ、横、そして脚を触り眺めた。両手で碁笥を取り、重さを確かめ、碁盤の上に戻す。そして蓋を開け碁石を一握り取り出した。丸く膨らんだ石である。プラスチック製ではない。
「これって囲碁の作法なのかな」わかばの心の声がこぼれていた。
「すごく高そうですね」とゆきねは訊いたが、
「そうなの?」とみんなよく分かっていなかった。
「校長先生って囲碁やるんですか?」
ゆきねの問いにわかばが応えた。
「以前やってたんだと思う。最近やらなくなったからって言って持ってきてたから、相手がいないんじゃないかな?」
「じゃあ橘さんが相手できるね」とかえでが言った。
どのくらいの棋力なんだろうと考えながら、ちょっと戸惑ってしまい苦笑いになった。
「みなさんはしないんですか?」と訊いた。
「五目並べくらいならしてたけど」とひなのが言ってみんな笑った。
「校長先生が教えてくれるって言ってたんだけど、そんなにしょっちゅう来るわけじゃないので、そのままだね」とわかばが言うと
「そうだね」とみんなが相槌を打った。
「橘さんが教えてくれるのなら、やってもいいよ」とかえで。
「そ、そうですか…、私でよければ…」
「じゃあ決定!」
「二人とも入部ね」とひなのが続けた。
「えっ、いや、その、私は…」とあゆみは急展開に慌てた。
「大丈夫よ、部活の掛け持ちは二つまでできるから」
と押し切られてしまった。