第6話 対局
文字数 832文字
茶道部の活動日。ゆきねとあゆみ以外に新入部員はいなかった。
三年生が、わかば、かえで、ひなの の三人。合計五人での部活動が始まる。
今日は先生が二人も来ている。顧問の杉原先生と校長先生だ。お茶の後にゆきねと校長先生とで一局打つことになっている。
校長先生が持って来てくれた塩饅頭をいただき、わかばが点てたお茶を味わった。
今日は茶道の講習ではなく、囲碁の対局がメインとなる。
「橘さんは棋力はどれくらいかな?」
碁盤を前にして、校長先生が訊いてきた。
「一級です」
「ほう、すごいね。それなら私より相当上手いな」
「校長先生は?」
「良くて五級くらいかな。それよりも悪いかも知れん」
「平手で構わないですか?」
「もちろん。打ち始めが楽しいんだよ」
ゆきねもそう思った。自分の攻めたい場所を、相手の手と交互に打ち合い、探り合っていく。その最初の部分が一番緊張するし、楽しい時間だ。
「じゃあ、にぎりから始めよう」
校長が白石を五つ出した。ゆきねは黒を二つ。校長が黒で先手だ。
「よろしくお願いします」というゆきねの言葉が合図となり、お互いに一礼する。
校長は背筋をピンと伸ばし、綺麗な姿勢からゆっくりと腕を伸ばし、丁寧に小目 に石を置いた。とても自然で美しい形だった。囲碁にも作法があるようだった。
ゆきねは自分のテンポではなく、校長に合わせて打つことにした。ゆっくりと、相手の呼吸に合わせて、間合いをとる。星に打つ。
ゆきねのテンポは終始変わらなかったが、校長は次第に遅くなり、考える時間が長くなっていった。校長の棋力は言っていたほどのものでは無かったが、いい練習相手になると思った。でも毎日打てるほど暇ではないだろう。
対局は校長のミスであっけなく終わった。いい勝負で終わらせたかったので、残念だった。
「あそこでミスらなければいい勝負でしたね」
「いやいや、これが私の実力だよ。とても楽しかったよ」
校長は対局中の真剣な顔とは違い、とてもほころばせていた。本当に楽しかったようだ。
三年生が、わかば、かえで、ひなの の三人。合計五人での部活動が始まる。
今日は先生が二人も来ている。顧問の杉原先生と校長先生だ。お茶の後にゆきねと校長先生とで一局打つことになっている。
校長先生が持って来てくれた塩饅頭をいただき、わかばが点てたお茶を味わった。
今日は茶道の講習ではなく、囲碁の対局がメインとなる。
「橘さんは棋力はどれくらいかな?」
碁盤を前にして、校長先生が訊いてきた。
「一級です」
「ほう、すごいね。それなら私より相当上手いな」
「校長先生は?」
「良くて五級くらいかな。それよりも悪いかも知れん」
「平手で構わないですか?」
「もちろん。打ち始めが楽しいんだよ」
ゆきねもそう思った。自分の攻めたい場所を、相手の手と交互に打ち合い、探り合っていく。その最初の部分が一番緊張するし、楽しい時間だ。
「じゃあ、にぎりから始めよう」
校長が白石を五つ出した。ゆきねは黒を二つ。校長が黒で先手だ。
「よろしくお願いします」というゆきねの言葉が合図となり、お互いに一礼する。
校長は背筋をピンと伸ばし、綺麗な姿勢からゆっくりと腕を伸ばし、丁寧に
ゆきねは自分のテンポではなく、校長に合わせて打つことにした。ゆっくりと、相手の呼吸に合わせて、間合いをとる。星に打つ。
ゆきねのテンポは終始変わらなかったが、校長は次第に遅くなり、考える時間が長くなっていった。校長の棋力は言っていたほどのものでは無かったが、いい練習相手になると思った。でも毎日打てるほど暇ではないだろう。
対局は校長のミスであっけなく終わった。いい勝負で終わらせたかったので、残念だった。
「あそこでミスらなければいい勝負でしたね」
「いやいや、これが私の実力だよ。とても楽しかったよ」
校長は対局中の真剣な顔とは違い、とてもほころばせていた。本当に楽しかったようだ。