第8話 囲碁・茶道部

文字数 815文字

 カシャカシャカシャとお茶を点てる音。
 部長の白石わかばの動きには、一つの無駄もない。全ての動作がつながっていて、一つの流れとなっている。それが作法というものだと改めて知る。
 気持ちを落ち着かせて、甘いお菓子と、苦味のあるお茶で、口から喉、そして体を潤す。お腹の中で安定する感覚。
 そして、お茶のあとは囲碁。
 気持ちを落ち着かせたあとの精神集中。とても効率よく進む。この組み合わせは最高だと、ゆきねは思った。

 部室の外にある部屋を示す「作法室」と書かれているはずのプレートには、上から「茶道部」と書かれた紙が貼られていた。しかし今はその前に「囲碁・」と貼られている。ただ長さが合わなかったのか「囲」の文字がプレートからはみ出してヒラヒラとしている。
 「囲碁・茶道部」になってから、校長先生が部室にくる頻度が確実に増えていた。今日もひょっこりと顔を出した。
「橘さんは大会には出るの?」
「はい、棋力認定戦に出るつもりです」とゆきねは応えた。
「あ、本戦の方じゃないの? アマチュア名人戦の」
「そっちは全然無理ですよ、段の人たちばかりですから。まずは一級の認定をもらおうと思っています」
「なぁんだ、そうなのかい。ところで、団体戦には出ないのかい?」
 みんなは顔を見合わせた。

「団体戦は、三人で一つのチームを作って、それぞれが対戦して多く勝ったチームが勝利となります」とゆきねが説明した。
「で、誰が出るの?」かえでが聞いて来た。
「みんな」
「ムリムリムリ」とみんなが口を揃えた。
「ええーっ、せっかく始めたんだから出てみましょうよ」
「でもいきなり対戦とか大会とか…」
「じゃあいきなり棋力認定戦は?」
「もっとムリだぁ」「もっと練習したい」とそれぞれが口にする。
「でもその練習の成果を見ないとね」
「そうなんだけど…」
「じゃあまず、私が出る棋力認定戦を見にきて。たぶん初心者向けの勉強会もあるから」
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登場人物紹介

橘 ゆきね


中学1年生 アマチュア囲碁1級

川原 あゆみ


中学1年生 ゆきねとは小学校からの友だち

白石 わかば


中学3年生 茶道部 部長

青田 かえで


中学3年生 茶道部員

赤松 ひなの


中学3年生 茶道部員

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