VOL8 「平和な昼下がり」

文字数 1,401文字

ー転生のアメリカ編 VOL8ー
「平和な昼下がり」
サンフランシスコ 1990年3月

到着した空港で知り合った
見知らぬ日本人の20代の女の子と
ホテルにチェックインして
(別々の部屋ね)、
さっそく名物のケーブルカーで一緒に
フィッシャーマンズワーフへ行く。
車両が走ってるのに飛び乗ったり、
飛び降りたりするひとがいるし、
ドアもないし、
満員でひしめきあってるし、
すごい乗り物やなあ。
こんな状態で車掌さんはちゃあーんと
のがさずに全員の運賃を
徴収するそうである。
ううーーん、ホンマかなあ?
ついタダ乗りに挑戦してみたくなる。
坂道をどんどん下っていった
突き当たりが目的地だ。

カニ、ロブスター、カキのどれかを
食べたかったけど、けっこう高い。
海辺で肌寒いのでとりあえず
ホットココアを飲む。
(3$くらいやったかなあ?)
おいしいし、日本の店で出てくるものの
3杯分!くらいの量がある。
ご存知の通り、アメリカでは食べ物や
飲み物はたいてい量が多い。
レストランで食後にコーヒーを飲んでも
ウエイトレスはこっちが「もういい」と
言うまで何回でも大きなカップに
水のように注いでくる。
まるでわんこそばだ。
これで1〜1.50$くらい。
なんでもたくさん飲みたいタイプの俺は
満足である。

数m下の海面からはアシカがのどかに
顔を出しているし、観光客が
たくさんいて実に平和な雰囲気だ。
俺の防衛本能が「今ここは安全」
と教えてくれている。
ロサンゼルスの緊張感とは
まったく違う世界だ。
(ただしここでも夜のダウンタウン
などは安全とは言えないらしい)

ゴールデンゲートブリッヂへ行ってから
坂を下りきったサウサリートへ。
絵によく描かれる小さな港町だ。
歩いていくと何か楽器の音が
聞こえてくる。
人だかりの中を見るとキレイな緑色の
衣装で揃えた10数人の中学生?の
少女のグループが路上で
見たことのない踊りを披露している。
2人のタータンチェックの
スカートみたいなのを履いた男が
フシギな笛を吹いている。
味わい深い笛の音に合わせて
少女達が躍動的に華麗に舞う。
「なんやろう!? 
この素敵な踊りは?」
次に紫の衣装の女子高生?の
グループが続く。
大衆の真ん中で少し緊張しながらも
一生懸命踊る彼らの姿から
目を離すことができない。
踊り終わると彼らはコーチと思われる
やさしい目をした30代くらいの
女のひとのまわりに集まり、
「やったわー!!」
と跳び上がり、抱き合ってはしゃいだ。
※この光景を撮った写真は帰国後、
写真屋のオッチャンが気に入って
サービスで引き伸ばして
額に入れてくれて、駅前の銀行の壁に
半年くらい飾ってもらった。
(まだフィルムを使ってた時代だ。)
後でわかったけど、この踊りはその後
10年?ほど経って大阪でも公演されて
大ヒット、ロングランとなった
「アイリッシュダンス」だった。
ちなみに緑はアイルランドの国を表す色
であり、アイルランドの建国記念日には
みんな緑の服を来て、
顔にも緑のペイントをして、
ビールまで緑のものが登場して、
大騒ぎして国をあげてのお祭りとなる。

この面白い笛はバグパイプと呼ばれ、
スコットランドなどで受け継がれる
民族楽器である。
一度聴くと忘れられない
なんとも味わい深い音色。
形もなかなか個性的でイイ。
タータンチェックは伝統的な
民族衣装に織り込まれる柄だ。
※スコットランド出身の現在
ウチのバンドのギタリストのドミニクが
日本で知り合いの結婚式に
この民族衣装で出席したら大好評!
だったそうな。
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