VOL4 「紫色の波」

文字数 1,315文字

ー転生のアメリカ編 VOL4ー
「紫色の波」
ロスアンゼルス 1990年3月

「キョーフの洗礼」の翌日、
ダウンタウンをうろつく。
月曜なので今度は店も開いてるし、
ヒトもいっぱいいて街は
活気づいている。
話相手もなく、ひとりでただ
周りを見ながら歩いているだけなのに
サビシイなんてまったく思わない
どころか興奮してウキウキしてくる。
「すごいなあっ!
今、俺はテレビや映画でしか
知らんかったアメリカを
たったひとりで歩いてるんや!
知り合いもひとりもおらん。
俺が望めばスタンバイパスで
明日ニューヨークでもラスベガスでも
どこでも行けるぞお!
完全な自由やあ!!」

昼食。
メキシカンレストランに入る。
直径80cmくらい?のでっかい
ハットを被って飾りの付いた服で
揃えたヒゲ男達のバンドが
明るい曲を演奏している。
「マルガリータあ!
セニョリータあ! テキーラあ!」
タコスを食べるけど、
残念ながら妙な味で口に合わない。
コロナビールを飲んで
演奏と雰囲気を楽しむ。

翌日、サンタモニカビーチへと
バスで向かう。
宿はまったく決めていない。
方面によってバス停が違うので
地図で調べて行くけど
バス停の場所が変わってしまってて、
ひとに訊いて廻ってナンギする。
「歩き方」はホンマに役立つけど、
情報が古かったり、不正確なことも
けっこう多い。
やっとバス停にたどり着いて
バスに乗り込む。
日本みたいに「次は、、、、」なんて
アナウンスをしてくれないから
地図と窓の外の通りの名前とを
照らし合わせながら現在地を
把握するか、ドライバーに
降りたい場所を伝えてそこに着いたら
教えてもらうようにする。

到着ー。
モーテル(モーターホテルの略語)の
部屋を確保してさっそくビーチへ。
ここはいつも風が強いような感じだ。
真っ青な空に真っ白なカモメが
気持ちよさそうに飛んでいる、
というより風に乗って浮かんでいる。
パームツリーがここにはよく似合う。
広おーいガラガラの駐車場では
ローラーブレード
(’90当時、日本にはまだ
入ってきていない)
やスケートボードに乗って、
でっかいウィンドサーフィンの帆を
掲げてけっこうなスピードで
滑っているひとらを見て驚く。
「ナルホドなあ。」
いつも風が強いこの環境
ならではの発想だ。
アメリカ人はなんでも遊びにして、
そのうちの一部はやがて競技へと
発展していく。

夕方近くなり風が冷たくなってきた。
暖かいロスアンゼルスとはいえ
まだ3月下旬だ。
浜辺にはジョギングや散歩するヒトが
たまに通るだけになった。
遅い夕暮れ時ー。
あの陽の沈む方に日本がある。
あっちは今、昼過ぎなんやなあ。
ここの夕焼けはなんて
キレイなんやろう。
やがて沈もうとする太陽から
こっちへ向かって海の上をゆっくりと
オレンジ色の帯が繋がってくる。
浜辺に膝を抱えて座った俺は寒さで
震えながらもその美しさに惹き込まれ
ここを去ることができない。

そして俺は見た!!
打ち寄せる波を通して夕陽が染まり、
なんと波自体が「紫色」に
見えるのだ!!
紫色の波ー。
見たことのない神秘的な風景。
小学生の時に赤と青の絵の具を
混ぜると紫になるのを知った。
でもこんな形でそれを
見れるなんて、、、、。

クリスチャンラッセン達の絵の
鮮やかな波の色が誇張されたもの
ではないことを俺は知っている。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み