プロローグ

文字数 357文字

 わたしは温室が好きだ。
 暖かくて、安全で時の流れから取り残されて、外の雑音が聞こえない眠ったような空間に、ただただ温もりを感じて、ずっと潜んでいたい。
 わたしは温室の中で、いつもその温室を手放すまい、壊すまいと、そればかりを考え、ねがっている。ただそれはとても壊れやすく、ちょっとしたキッカケで、温室たり得なくなってしまう。わたしはその部屋から出て行くことを余儀なくされ、そして冷たい風の中を、次の温室に辿り着くまで、歩いて行かねばならない。
 もちろん、温室がわたしにとって、なくてはならないものかといえば、そうではない。しかし、温室を見つけたわたしは、その誘惑に負けて、ドアを開けてしまうにちがいない。そして、それが破壊されるまで、そこに居続ける。いつまでも、わたしの温室が、温室であり続けることを祈りながら。
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登場人物紹介

河相 語り手

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