第2話

文字数 780文字

「ちょっと、あなた邪魔よ。さっきからそこに
止まったままで、さっさと動いてちょうだい、
後ろがつかえてるんだから」
少しピンク色した、おしゃれな入道雲に小さな雲は叱られました。
「そうだ、そうだ、じゃまなんだよ」
もくもくの入道雲が怒っています。

「すみません、ボクここから動けないんです。
先に行ってください」
「動けない?何を言っているの、私達は動きながら旅をしているんじゃない、動けない雲なんて聞いた事ないわ」
「そうだ、そうだ、ここにずっといたって面白くもないだろ、動いているから面白いんじゃないか」入道雲はますます怒っています。
いまにも、雲の中で雷が鳴りそうです。
「でも、ボクはここから動きたくないんです、
ずっとここに居ると決めたんです」

「旅してるとおかしな奴に会うもんだ、こんな奴はほっといて行こうぜ」
もくもくの入道雲は、小さな雲に覆いかぶさるように流れていきました。
小さな雲は息苦しさにたえて、その場に踏ん張りました。

小さな雲は、流れていく雲からいつも変な目で見られます。
暑い季節には、今日のような元気のよい怒りっぽい入道雲に会います。
涼しくなってくると、陽気なうろこ雲に
「ずっとここで何してるの?流れて行こうよ皆んなで」と誘われたりしました。
羽衣のような雲には「私達は流れていく運命なのよ、逆らっちゃいけないわ」とたしなめられてしまいます。
時々、自分と似たような雲から「おれこんな形にもなれるんだぜ」と どちらが凄い形になれるか挑戦を受けたりします。 
でも、1番大変なのは空の暴れん坊台風に連れて行かれそうになる時です。
大きな渦に飲み込まれそうになりながらも、
小さな雲は毎回必死で台風をやり過ごしてきました。
そうして、小さな雲はこの場所に1年以上いるのです。
でも、ここへ来る前には他の雲と同じように、
小さな雲も自由に広い空をずっとずっと旅して暮らしていたのです。
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