第3-1話 畜生界に堕ちた漢  (1) きつい労働と現場監督

文字数 1,246文字

 畜生会に堕ちた漢
(1)きつい労働と現場監督

 「被告は…先祖代々、牛馬等々の動物を使役し、これを喰らい…また、少年期にあってはクワガタ等の昆虫類をトラップにて大量に捕獲しては飼い殺し、金魚等の魚類も金魚鉢にて飼い殺し…長じては犬に首輪をつけて引き回し、町中の笑い物に…」

 ここは、どこなのだろう。
 そうだ、私はコロナが重症化して病院で集中治療室にいたはずだ。やたら、呼吸が苦しく脳波計がピーッと鳴った所までは意識の中で憶えている。

 どうやら、私は亡くなったらしい。そして、
 ここは冥府らしき所、それも中幽界の裁判所らしき所なのだ。室内は、真っ赤な光り、そして何やら熱苦しい。

 私の両脇は、K-1ファイターよろしき屈強な鬼が棍棒を持って抱え、微動だにできない。

 「…よって、被告を畜生界にて30,000年の懲役刑に処す!」
 閻魔様らしき裁判長に主文を言い渡されると、私は鬼達にグラグラとマグマが煮詰まる穴に投げ込まれた。

 「ま、待ってくれ。アーっ!」

….@@@@@

 気がつくと、私はモッコを持って延々と土を運んでいた。額から、汗がとめどなく流れる。

 地上の温度からしたら、摂氏四十度位、辺りは夕焼けのように真っ赤な鮮血のような光で包まれている。

 「早く働けーっ!もっと気合いを入れんかい!」

 ビシッ!ビシッ!
 ひーっ、ひーっ。

 畜生界にも工事現場の監督はいるようで、この馬場と名乗る漢はその顔が馬そのもの、身体は人なのだが、手にはSMクラブで使うような棘付きの鞭を持って畜生界に堕ちた人々を叩いている。

 「も、もう働けません。ごご勘弁を!」
 老齢な者や体力の劣るものは、重労働を免除してくれるよう頼むのだが、
 「甘ったれるなーっ、働かざるもの食うべからずだーっ!ましてや、貴様ら虜囚だろうが!
ヒッヒーン!」
 ビシッ!結局は、鞭打たれ、背中から血を滲ませるのであった。

 「休けーい!」
 現場監督の鶴の一声で、皆がモッコやツルハシを投げ出した。

 現場監督の指示で皆一列になり、ブルドックの頭をした給料係らしき漢から、紙幣を一枚づつもらいプレハブ小屋のような処に入っていく。

 受け取った紙幣を見てみると、1000畜生円とあり、この世界でも貨幣経済はあるようだ。
 ただ、図案が猿の顔をした総理大臣らしき政治家が描かれているのが奇妙なだけだ。

 私の後ろの者が、文句を言いだした。
 「散々、こき使いやがって。何が1000円だ。こん畜生!ガキの使いじゃねえんだぞ。」
 男が凄むと、どこからともなくハイエナの頭をした作業服の男達が5-6人出現し、この男に噛み付き始めた。

 ギャー!
 男は、腹を食い破られると内臓を引き出され、男が絶命して動かなくなると、七輪まで用意して焼肉のタレで堪能して、骨までしゃぶられ、みるみる白骨化してゆく。
 「やっぱりハツは最高だ」
 「ガツも歯応えがたまらないな」

 私は見てはいけないものを見てしまったようだ。見て見ぬ振りをして、皆と一列になって食堂のプレハブ小屋に向かった。

 

 

 
 
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