#04-06  この世のルール ⑥ 死ねと言うこと

文字数 863文字

 



 幽体の世界にも、いろんな事情がある。

 幽体が幽体に向けて「死ね」や「殺す」という殺意()な文言を表現した場合、たとえそれが冗談や文書であったとしても、



────────────────────────
表現したほうはラストする
表現されたほうはロストする
────────────────────────



 このメカニズムはさっぱりわからないけれど、とにかく、幽体同士の殺意的文言の交換には、以上の代償がついてまわる。()()、そうなる。

 もちろん、フィクション作品として表現されたものであれば、代償は払われない。でも、もしも深層心理に明確な対象が介在すれば、いかに著者がフィクションだと自負していても、必ずや代償効果はあらわれる。

 結局のところ、致命的なリスクをともなう行為なので、幽体同士の殺意的文言の交換は、重大な御法度となっている。それが証拠に、刑法のなかにも係る行為に対する刑罰が盛りこまれてある。例えば、



────────────────────────
致失謀略罪
【 ちしつぼうりゃくざい 】

 第三者に殺意的文言を表現させるよう計画する罪で、重度の禁錮(きんこ)刑と罰点(ばってん)に処される。
────────────────────────
致失幇助罪
【 ちしつほうじょざい 】

 第三者に殺意的文言を表現させる計画を幇助する罪で、重度の禁錮刑と罰点に処される。
────────────────────────
致失誘導罪
【 ちしつゆうどうざい 】

 第三者に殺意的文言を表現させる計画を実行する罪で、大罪とされ、禁錮刑よりもおそろしい実刑に処されるらしい。
────────────────────────



 いずれにせよ「死ねばいいのに」などと誹謗して笑っていられるのは、あの世にかぎったお話。

 私に殺意をあらわした少女は、結果、あの世に倫力を奪われ、慟力を囚われ、虜囚霊になった。もう、彼女は永遠に活動霊として生活することができない。しゃがみこんだまま、じっとその場に固まりつづけるのみ。

 紹介が下手だった。

 ずっと後悔してる。



 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み