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文字数 671文字

 始まりは簡単な出来事だった。
30に成った頃中学の同窓会があった。
 結婚している者、していない者、色々だったがその中に俺の初恋の人がいた。
名前は佐藤恵(さとうめぐみ)結婚していた。
しかも、最近だという。
俺は学生時代から、別の高校に通う彼女を何度も見ていた。自転車で通学するのを見掛けた。
バスに乗り合わせた事もあった。
だが声は掛けなかった。

 唯の片思いの中学の時のクラスメート、そう思っていたからだ。
彼女もそう思っていただろう。
俺の気持ちは知る由もないか。
 だが、同窓会で二次会になった時、彼女は俺の隣のカウンター席に座っていたのだ。
 チッ、誰か俺の、昔の思い出を知っていて、イタズラしやがったな、と思ったが。
俺はとても楽しく嬉しく彼女と話をした。

 意外な事に話は弾んだ。
結婚の話しをすると、彼女の顔は曇った。
そうかこんな時に言う言葉ではなかったなと。
俺は片思いの男を演じていた。
確かにその時までは。
 俺は以前、25歳位の時に彼女とばったり街で会っている。
その時俺は、ようやく出来た年上の彼女と腕を組んで信号待ちをしていた。
すると反対側道路を隔てて恵がいた。
笑っていた。

 今まで何度もすれ違ったりしたが、見知らぬふり、気付かぬふりをお互いしていた。
その彼女が笑って見ていたのだ。
 俺はやっと出来た今の彼女と一緒にいる事で、天にも昇る心地で幸せだった。
これは天の試しとか言うものに違いない。
お前は、あの人を忘れられるのか?
諦められるのか?今の人で良いのか?と。
 でも俺の心は決まっていた。
今、この俺の隣にいる、彼女を愛しているだから、もう良いと。
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