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文字数 853文字

 そこには彼女の女友達が座っていて、俺達を見ていた。恵はバツの悪そうに、友達に軽く手を振った。
 あの時と同じだ!
俺達は二人がけのテーブル席に座った。
俺は更に無口になった。泣きたくなってきた。
 俺がどんなに頑張っても、恵とは付き合う事は出来ないのだよ、と神か悪魔が俺に教えているのだろうか?
 黙る俺に恵は、

「何か・・・言わないの?」

と言った。この言葉は思い出せない。
新たな歴史か。俺は腹を括った。

「今度の日曜日、遊びに行かないか?」

以前の彼女の返事は、
 その日は用事があるだった。
俺は次の週は?と聞く。するとその日もと言われて、いつだったら暇だい?と聞いたのだ。
すると、彼女の返事は、
「ずーっと、空いていない」だった。

 つまり俺とはデートをしたくない、と言う意味だ。そこで俺はフラれたと理解して、彼女を諦めたのだ。
何の事は無い、また同じかと思ったら。
 彼女の口から意外な言葉が出た。

「その日は行けないと思う。
そして、永遠にあなたとはデート出来ないわ。
ごめんなさい」

 何だ?これは全部纏まった返事ではないか。
どういう歴史の改変だ?
俺は涙が流れた。
これで御仕舞いか、何てタイムスリップだ。
唯、苦しんだだけか?
 すると彼女は、

「二人には縁が無かったわね。
私が誰とも付き合ってる人がいない時には、
あなたに好きな人が別にいて。
私が付き合ってる人がいる時に、
あなたは一人だった。ちぐはぐよね」

 えっ?それは、30の時の同窓会で言った、
セリフじゃないか。
 驚く俺に彼女は、

「幸せになってね」

と笑って言った。俺は、

「君は俺の事をどう思っていたんだ?
好きだったのか?」

と聞いた。恵はニッコリ笑うと、

「それは、どうかしらね」

と言った。
 唖然とした、あの時の台詞だ!
30に成った時の同窓会で言われた台詞だ。
じーっと恵を見ていると、

「ごめんなさい、そろそろ行かなくちゃ。
楽しかったわ」

と彼女は満面の笑みをたたえて、店を出ていってしまった。
俺は茫然と見送り。コーヒーに口をつけたが、突然、激しい頭の痛みに気を失ってしまった。

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