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文字数 625文字

 だが俺は、

「お久しぶり」

と輪の中に入った。誰かが、

「きたきた」

と俺に言った。
 同級生と取り留めも無い話をしながら。
俺は恵を、チラチラ見ていた。
近くで見ると何ともたまらないぐらい美しい。
この人が自分のものになるのなら、命も惜しくないとすら思えた。
俺は成人式が終わると、恵を廊下で捕まえて。
こう言った、

「高校の時の返事を聞いていない」

恵はえっ?と言う顔をした。
 憶えていないのだな。ならば、

「好きです、付き合って下さい」

と俺は再び告白した。
 彼女は悩んだ顔をしたが、

「ごめんなさい。付き合っている彼氏いるの。
それより、これから皆でカラオケ行くんでしょ?」

と俺の告白を断りながら、そんな事を恵は言った。俺はこれは冗談にでもした方が良いのかなと、困った顔を苦笑いに変えて。

「ああそうだな、彼氏と別れたら電話してくれよ。いつまでも待ってるぜ」

と、まるで心にも無い事を言った。
そしてそのまま、中学の同級生と共にカラオケに行った。当然、やけ酒をしこたま飲んで。
俺は正体を無くして家に帰った。

 翌朝、俺はアパートにいた。
一人暮らしをしているアパートにだ。
二日酔いだった。
戻ったのか?今に現代に?
 俺はそう思ったが、壁にあるハンガーに掛けているスーツが違った。
どうやら、まだ就職して間もない頃に転生?
タイムスリップしたようだ。
まったく俺はふられる展開に辟易していた。
もういいんだがな・・・。満足した。
俺は恵とは一緒になれない。
いや付き合う事すら出来ない、理解したよ。
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