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文字数 743文字

 恵は横断歩道で、すれ違う時ニッコリ笑っていた。俺も笑い返した。
 それから数年後、俺はつまらない喧嘩で、
その時の彼女と別れてしまった。
 だから二次会のバーのカウンター席で、
こう聞いた。

「あの時、俺が一人だったら、声を掛けたら。俺と付き合ってくれた?」

 彼女は少し酔ってはいたが。
そこはキッパリと、

「それは、どうかしらね」

と答えたのだ。
 フッ、俺の事そんなに嫌いなのかな?
俺は彼女の目を見続けた。
彼女は結婚して幸せなのだろう。余裕で微笑み返していた。そして、

「あなた、私の事好きだったの?
全然、言わなかったから分からなかった」

と恵が言った。
嘘だ!俺が恵を好きなのをクラスメートが全員知っているのに、気付かない訳がない。
 だが、そうだな言わなければ分からない事もある。言ってもらわなければ困る事もある。
唯、見詰めているだけなんて・・・。
 行動にでれば、告白すれば、たとえフラれても何かがあったかも知れない。
何かが・・・。

 そうだ少なくとも、この後悔だけは無かった筈だ。
その時俺は思った、時間を戻せたらと。
もし戻せたなら俺は必ず言う「好きだ」と。
そんな事を考え、俺はしたたか酔っ払い家へと帰った。

 その翌日。
異変が起きていた。俺は実家で目を覚ました。
 俺は仕事を始めてから直ぐに、実家を出て、一人暮らしをしている。
だから最初俺は、酔って間違って実家に帰ってきたのかな?と思った。
 だが様子がおかしかった。
何故か、その部屋は俺が学生時代にいた頃の部屋なのだ。
今でも俺が実家で泊まる時には使っているのだから、ここに寝ていてもおかしくはない。
だが、そこには高校生の制服が掛かっていたのだ。

 えっ?と思い起き上がると周りを見回した。
懐かしい部屋のレイアウト。
今も殆ど変わらないが、大きな本棚があった。
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