第4話

文字数 1,416文字

「でも女優って大変だね・・・それに想像していた光景と全然違った・・・」
数日後、シャーロットに再び会うと、シャーロットはまず初めに首を傾げて見せた。
「テレビや映画のスクリーンで見る綺麗な背景は役者には見えないし、時々グリーンバックだったりもするしね。あとは、確かに役者が見ている方は特にカメラばっかりで私たちが見ている光景よりさらに暗いものかもね」
シャーロットは何かを思いついた顔を見せた。
「ロダンの『地獄の門』みたい!」
「それは失礼だよ」
「そうね」
そういうとシャーロットは普段の能天気に明るい子どもらしい表情に戻った。
おそらくロダンの『地獄の門』という表現が思い出せずにモヤモヤしていたのだろう。
クリスティーンはその時ひらいた。
「そうだ・・・疲れすぎているんだ・・・」
クリティーンがそう言い放つと、シャーロットは首をかしげた。
「どうかしたの?」
シャーロットがクリスティーンの顔を不思議そうに横から覗き込む。
一方でクリスティーンの眼はルンルンと輝いている。
「ねえ、シャーロットは眠くてどうしようもない時、全てがどうでも良くなってしまうことってない?例えば、遊園地に行って観覧車に乗ったとして、睡魔におそわれたら、綺麗な景色はみたいけど、寝てしまいたい気持ちにもならない?」
シャーロットは上の方を見上げて、少ししてから答えた。
「それはそうかも」
「つまり、そういうこと!」
シャーロットは意味がわからなかったが、特に追求するのも悪いと思い、それ以上は追求しなかった。
クリスティーンは大抵の問題は、ほぼ大体、最初に感じた直感によって仮説を組み立て、解決に導いてきた。
そのため、自分のこの仮説が間違うなどと思うことは全くなかった。
しかし、今回は人の感情の問題。
証拠や物的な状況の推測ではない。
彼女はそこに気づいていない。
まさに、「答えが見つかった」と判断して、気持ちが高揚するのを感じた。

そして、エマに「モチベーションが下がった原因がわかったと思う」と連絡を送った。

「本当!?」
エマからテキストベースでその連絡に喜んだ反応が返ってきた。
「まだ現段階なので、あくまで仮説ですが・・・」
クリスティーンは謙遜してそう連絡した。
「まだ出会ったばかりだし、それは大丈夫よ。とりあえず、あなたのアイディアを聞かせてちょうだい」
「はい。では、まず、エマさんは体力的に今辛いと思うことはないですか?」
30分ほどしてからエマから返信が入る。
「う、うーん・・・どちらかというと昔は本当に辛いと思ったけど、今は少し慣れたかな・・・」
クリスティーンは予想外の反応が入ってきて戸惑う。
肯定する言葉とともに愚痴が出てくるもんだと予想していたからだ。
「疲れすぎて、何かを選ぶことも面倒くさいってことはないですか?」
「うーん、それはあるかなー。でも面倒くさいけど、前よりもどうでも良いこととかいちいち考えることは増えたかなー・・・」
このエマの返答でクリスティーンは自分の仮説がズレていることに気づいた。
このまま続けても無駄だと思い、クリスティーンは
「たぶん間違えた答えを言おうとしているからもう一回考えても良いですか?」と連絡した。
「もちろん」
とエマから連絡が返ってきた。
クリスティーンはため息をついた。
『そもそもなぜこんな面倒なことに自分は足を突っ込んでしまったのだろうか・・・』
と後悔の念が押し寄せる。
もう一度クリスティーンはため息をついて、図書館に出かける準備を始めた。


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