2020年 4月 オセロニア学園 絶望蘭陵王とデネヴ

文字数 6,793文字


ここは、私立学園オセロニア。
明るく、元気に、逆転的にをモットーとした学園で、日々様々な生徒が通っている。
今回は、そんな日々を描いた物語。


一人のオセロニア学園に通う女子生徒が一世一代の勝負に出た。
彼女は今日、今から下校する3年F組の日の光に輝く小麦色の髪をしたデネヴと言う、美形の青年にラブレターを渡すのだった。

「デネヴさん、あの〜これを。」
その女子生徒が緊張で震えながら渡す手紙をにっこりとした笑顔をして、彼は受け取った。

「なんだい、お嬢さん。
くれるなら受け取るが。」

「キャー、渡しちゃった。」
デネヴが少しとぼけたセリフを言い、受け取ると、見知らぬ女子生徒は顔を一気に赤くしながら逃げるように遠くに行ってしまった。

「行ってしまったか、これはラブレターか。
アルンが怒るかもしれないな、まぁそこもかわいいところであるから見せてみるのも良いかもな。」

「また、デネヴが他の女性を引っ掛けている。」
それを、外に出ているデネヴを二階の校舎から赤い角を持った白い長髪の女子生徒が眺めていた。
彼女の名前は、アルンでデネヴの正式な彼女であった。

その後ろに、一人の友達でもあるメガネを外し女子生徒の服を着た蘭陵王と親友のレクシアがいた。

女子生徒の服に慣れていない蘭陵王は、スカートがめくれないように手で必死に抑えながらアルンに尋ねた。
「アルンさん、それで、私にこんな姿をさせてそのデネヴ先輩のところに行けばいいのか。」

「そうよ、アナタのそのキラッキラッの女子オーラで皆にデネヴがつきあっているのを見せつけるのよ!!!」
アルンは、セリフを強調させて両手を広げると蘭陵王から輝く光のエフェクトが出てきた。

「でもやはり、恋人のあなたが隣に入ればいいではないのか。」

「ゴフッ!!!」
蘭陵王の何気ない一言でアルンは、口から吐血するような声を出した。

「アルンが大ダメージくらいましたね。」
レクシアが苦笑いしながら言った。

「解説ありがとう、レクシアちゃん。
蘭陵王君、質問の答えなんだけど、私が隣にいても・・・。

女子学生「デネヴさん、これを受け取ってください。」
デネヴ「今、彼女と一緒にいるんだが。」
アルン「そうだ、私のデネヴを取らないでくれ。」
女子学生「そう言って、また嘘をついて女友達でしょう、はい、受け取ってください。」
デ「お、お、おう。」

って言われるんだよ、私のことを皆、彼女だと見てないんだよ。
うぇーんうぇーん。」
先程までテンションの高かったアルンは、女の子座りをしながら溢れ出る涙を止めるように空を仰ぎながら目を擦った。

それを慰めるようにレクシアが背中を優しく叩いた。
「大丈夫、アルン。
すいません蘭陵王さん、御協力していただけませんか。」

さすがに不憫に思ったのか、蘭陵王も女装しながら出歩く恥ずかしさを覚悟を決めたようで泣いているアルンに言った。
「そうか、それなら話は別だな。
任せてくれ、アルンさん、レクシアさん。
私が彼女役を演じて見せて、デネヴ先輩から他の女の人に近づけないようにさせてみせます。」

「ありがとうございます!!!」

「では、私は行ってくる。」
蘭陵王は、そう言いスカートをたなびかせながら、デネヴに追いつくように走って行った。

「よろしくお願いします。」

「そう言えば、アルンはデネヴ先輩にちゃんと演技のこと言ったの?」

「あっ、言うの忘れていた・・・。
でも、良いじゃないんかな、まさかデネヴがいくら顔が綺麗でも女装した男性に恋なんてね。
私もいるし。」
アルンは、余裕の表情で笑っていた。

「嫌な予感しかしない。」
レクシアは、ジト目でアルンを見ていた。



「また、こんなところをアルンに見られては、俺は完全に嫌われてしまうな・・・。」
デネヴは、アルンに見られてしまってはあらぬ誤解を生むことに警戒してか周囲を見渡していた。
遠くから、学園内の女子はほとんど覚えている(アルンと付き合う前に良くナンパをしていたため)デネヴが見たことのない、女子生徒が走って来て、デネヴの腕をハグした。

「デネヴさん♡(こんなもので良いのか、アルンからはラブラブカップルは積極的なほうがいいと言われたのだが、やはり恥ずかしいな。)」

「おっと、いきなりどうしたんだい、お嬢ちゃん。
(なんだ、初めて見る顔だが、彼女は俺の好みにどストライクなんだが、だが俺にはアルンがいるんだ。
いくらかわいい子がいるからってなびくわけにはいかない。)」

「それはこちらのセリフですよ、デネヴさん。
驚いた顔して、一緒に帰るとの約束でしょ。(あぁ、私はなんでこんなことを言っているんだ、さすがに友人からの頼みとはいえ、私もこの高音では喉が痛くなってきたぞ。)」
蘭陵王は申し訳程度にウィンクをした、本人はレクシアに教えられてかわいい仕草として何気なく行ったが、デネヴの鼻から赤いものがプシュと出た。

「これはいけない、はいハンカチを入りますか。」
蘭陵王は、たまたま持ち合わせていたハンカチを差し出した。

デネヴは慌てて鼻血を拭き取った。
「ありがとう。
そ、そ、そうだったのか。
そしたら、帰ろうか。(一緒に帰ることを約束した覚えはないが。
たまには良いよな、デートじゃないし、アルンを許してくれるはずさ、彼女とは友達ぐらいになってもいいだろう。)
ところでアナタの名前は?」

「私の名前ですか、私は陵王蘭という名前です。 
ぜひ、蘭ちゃんと呼んでください♡(いやはや、さすがにあざとすぎる、普通はひくだろう。)」

「そ、そ、そうか蘭ちゃんだな。
(カァー、凄いかわいい。
一度ぐらいデートしたい、だがこれでは二股になってしまう。
やめろ、デネヴ、今は俺はアルン一筋なんだ。)」

デネヴが顔を赤くさせているところを遠くから、二人は眺めていた。
レクシアは、先程からのデネヴの行動に疑念を持っていた。
まさか、今デネヴが惚れているのは、女装した蘭陵王なのではないのかと。
「アルン、デネヴ先輩大丈夫なの?」

「大丈夫よ、デネヴは・・・。
信じているわ。」
アルンも蘭陵王のあざとさに内心不安だらけだった。


そのアルンたちの他に二人を見つめる怪しげな影が二つあった。
二人を眺めていた一人は黒髪で白鳥のような翼を持ちゼルエルという名前で、隣にいる白髪の少女はオルロ・ソルシエという名前だった。

「おー、二人とも青春していますね。
二人ともカッコいいとカワイイし、いいこと閃いちゃった。」
ゼルエルが持ち歩いている双眼鏡を二人を覗き込みながら、何かを思いついたようだ。

「ゼルエルさん、また何かいかがわしい本の構想でも考えているんですか。」
そう、ゼルエルにはオルロには知られてはいるが、その他の生徒には知られてはいない、裏の顔があった。
それは、オセロニア学園にいる生徒をモデルに漫画を書き上げ、図書室に夜な夜な忍び込み本に紛れ込ませている。
魔王L太郎のペンネームの元に活動している。
オルロにバレたのは、夜、学園を出入りさせるのを見られて問い詰められてバラしてしまったからである。

ニコッ
「妄想は、タダですからね。
それと、オルロさんもリカルド君とイチャイチャしているでしょう。
それも描きましょうかね、ウヘヘヘ。」
だが、ゼルエルは逆に自分が漫画を描いていることをオルロにバレているが、他の人に知られないように彼女をこの調子で脅している。(なんて悪い天使なんだ。)

「ふぇっ、そ、そ、それは言わないでください、オルロとリカルドさんは健全なんだから!!!
もし、そんなことやったらオルロもブルー〇〇さんとホワイト〇〇さんにゼルエルさんが影でいかがわしい本書いていることを言いつけますからね。」
だがオルロも負けていなかった、彼女も綿密に調べ上げてゼルエルのあの手この手の弱みを掴み、現在は対等の立場であり、文字で表すと。

ゼルエルがオルロとリカルドの漫画を出す
↓抑止力       ↑抑止力
オルロがゼルエルの真実をばら撒く


「ファッ、そうか私がすまなかった。
だから、絶対にブルー〇〇やホワイト〇〇には言わないでくれ。」
ゼルエルもさすがに、部下にあたるブルー〇〇やホワイト〇〇にこのような真実を見せてしまっては、完全にIGENがなくなってしまうので慌てて謝罪の言葉を言った。

「そしたら、まだ仕事が残っていますので早く生徒会室に戻りましょう。」

「分かった、すぐに戻って描きあげましょうかね。」

「仕事のほうを先に終わらしてください。」

「分かっていますよ〜。」
軽快に生徒会室に戻るゼルエルの頭の中は、仕事よりもデネヴと蘭陵王の漫画のアイデアが沸々と湧き上がって、オルロも悟ったのか多分戻っても絶対に漫画のほうを優先させるだろうと、呆れたままゼルエルについて行った。





しばらく、二人で一緒に帰ると、デネヴは彼女(蘭陵王)に何が好きなのか疑問に思った。
「ところで蘭さん、せっかく初めて帰るのだから何処か食べに行かないか。(やっぱり、もう少し彼女と話がしたい。)」

「そうですね、そしたら麻婆茄子とかはいいですか。(ブフッ、自分で何を言っているのだ私は、いつものように好きな料理の感覚で答えてしまった。さすがにひくだろう。)」

「そうか、そしたら俺がいいところに連れて行っていやる。(ここまで麻婆茄子が食べたい女子とは初めてだが、こんなかわいい顔をしてギャップがありすぎるだろう。)」
 
「中華ティルウィングは、このお店なんですか?」
中華ティルウィング、名前は意味が分からないが見ての通りどこにでもある中華料理屋である。

「そうだ、名前は不思議だが、美味しいと友達から聞いてな。」

カラーン

二人が入ると、目の前にコック帽を被り、白い服をコックの服装をした店員の女性がいた。
「いらっしゃいませ、お客様。」

店の中は、夕方なのもあってあまり客はいなかったが、一人の赤髪の客が震えていた。
「辛い、辛すぎる、たったのスプーン一掬いでこれほどとは。
お、お、終わりなき戦いの始まりか・・・。」

バタッ

その客は、倒れ伏したままピクリとも動かなくなった。

「えっ、一体どういうことなの。」
デネヴは驚いて、その女性に尋ねた。

「その魔料理の名は、麻剣茄子ウィング。
気軽に3度口に入れれば、その者は気絶し。
一度口に入れようとするだけで隣にいる誰かが倒れ込む魔料理だ。
おや、お客さんですか、ではあちらの席へお座りください。」
その女性は凛とした顔つきで言った後、二人をテーブルへと案内した。

二人は席に着くと、デネヴは女性に尋ねた。
「ところでアナタは??」

「私はヘルヴォルと言う、ここのアルバイトだ。」

「(凄い、アルバイトなのになんだこのオーラは、もはや彼女は、アルバイトとという括りでは収まらない、そう表現するならば神の極地に至ったアルバイト、そう俺は表現しよう。)」

デネヴがヘルヴォルのオーラに驚愕しているとき蘭陵王は、メニュー表を見ずに迷わず注文した。
「私も魔料理、麻剣茄子ウィングを挑戦してみたいな。(やはり、デートというものは彼女から率先してリードしなくては。)」

「そうか、覚悟が決まったか勇者よ。
なら、料理長ホーフンド!!!
魔料理、麻婆ウィングを頼む!!!」
ヘルヴォルは、目つきが鋭くなり、厨房にいる店長に言った。

「うぃー。
顔は良いんだけど、アルバイトの癖に態度がでかいな〜。」
店長のホーフンドは、愚痴を溢しながら料理の準備をした。

「本当に大丈夫なのか、蘭さん。」

「えぇ、麻婆豆腐なら地元でもよく食べてますから。」

それから、十分後・・・。

「では勇者よ、待たせた。
コレが当店の魔料理、麻婆ウィングだ!!!」
ヘルヴォルが強い口調とともに赤い溶岩よりも赤い麻婆茄子を持ってきて、テーブルに載せた。

「うっ!!!(量は普通だが、嗅ぐだけで本能的に分かるこれは危険物だ。
一度、口に入れれば千針を超える痛みの数が舌を襲い、その一つ一つの痛みもまるで舌をバーナーで炙るようなものに違いない。
本当に食べきるのだろう。)」
デネヴは、あまりの匂いで目から涙が出て、咳き込んだ。

「さぁ、連れはあのようだが、勇者はどうする。」
ヘルヴォルは、腕を組んで蘭陵王の食べる様を見ていた。

「これがアナタのファイナルターンです。」
蘭陵王は、その掛け声とともにスプーンを麻婆茄子を掬って口に入れた。

15分後・・・。

「ふむ、中々悪くない味ですね、ごちそうさまでした。」
蘭陵王は、難なく麻婆茄子を平らげた。
デネヴは、ただ驚愕して無言だった。

ヘルヴォルは、蘭陵王のあまりの余裕に麻婆ウィングを平らげた様子を見てショックを受け両膝を着いた。
「まさか、これほどとは恐れいった。
また次も挑戦してくれ、激辛の勇者蘭さん、次は更に改良を加えた、竜滅辛(リュウメツシン)グラムをも持って、貴公を撃沈させよう。」

「また、勝手なこと言ってる。」
厨房のホーフンドは赤髪の男に注文された料理、杏仁豆腐を作りながら言っていた。

「ありがとうございます、ヘルヴォルさん。
このような美味しいものを作っていただき。」

「えぇ、次は絶対に負けないわ!!!」
 
カランカラン
「ありがとうございました。」

中華ティルウィングを後にした、二人は歩いていた。
「凄いな、蘭さんは・・・。(もう駄目だ、彼女を知ってしまったからにはアルンさん一筋じゃなくなる。
山にでも籠もって、精神の修行でもしようかな。)」

「では、私はこれで帰りますので。」
蘭陵王の顔を見たデネヴは、笑顔になった。

「蘭さん・・・。」

「はいっ?」

「ほっぺたに麻婆ウィングがついているよ。」

パクッ

「すいません。(なぜ、私はデネヴ先輩にここまで心臓が鼓動しているのか、まさか恋なのか。)
できれば、次も・・・、あれ?」

バタッ
「ふへーん、辛〜い。」
彼は麻剣茄子ウィングの辛さで気絶したようだ。

「デネヴ先輩!!!」

すると、それに合わせて遠くで眺めていたアルンとイクシラが走って来た。
「ありがとう、蘭陵王君、見事作戦は成功しました。
デネヴは、私達で連れて帰りますので。」

「そうか、やっと終わったか。」
それを聞いた蘭陵王は緊張がほぐれたのか、深呼吸してそのまま帰って行った。

その次の日の昼休み・・・。

蘭陵王が図書室で普段の制服で勉強をしていると、アルンとレクシアが向かって来た。

「それでどうだったのだ、二人の関係は。」

「それが、俺の心は蘭さんに奪われてしまったから再びアルンに戻るために山に行ってくるって言って戻ってこなくなったのよ。
うぇーん、うぇーん。」

「だから、アルンがそんな遠回しなことをするからこうなったのよ。」

「ううっ、デネヴに謝ってくる。」
その後、アルンはデネヴを探して、あれはアルンが仕組んだことと言い二人が学園に戻ってくるのに一週間かかったそうだ。

その頃、ゼルエルは。
「フフ、完成〜♪」
更にその一週間後、ゼルエルがこっそりと出した、自己出版した漫画、絶望蘭デネは学園内でばら撒かせて、見事流行させることに成功させた。
しかし、生徒会の取締りが激しくなり、2ヶ月ほど新作が出せなくなった。












ここは、何処かの学園の教室の中、一人の男子生徒がオセロニア学園で流行になっていたゼルエルの漫画を読んでいた。
「絶望蘭デネ、まさに青春だな。
ここの学園に俺は行って、青春と思い出を作らなければ。
彼には、いなくなる日数も何も教えていない、大丈夫なはずだ、半ば夜逃げのようだが、彼だけには絶対に逃げれなければ。」

すると、男子生徒が冷たい視線を感じ後ろを振り向くと。
「ここにいた、僕の親友♪」
ニチャァ

そこにいたのは、夜空の星の光のように薄蒼い長髪の男子生徒だった。
だが、その男子生徒は誰もが恐怖するような目つきでその漫画を読んでいた男子生徒の腕を掴んだ。
「ヒッ!!!
ハイライトがないよ、目が怖いよ。」

「どこに行っていたの、フフフフッ。
また、お仕置きしないとね。」
蒼髪の生徒は、不敵な笑いをしながら体を近づかせて行った。

「嫌だ、やめろ、ウワァァァァ!!!」
その男子生徒が近づいてくる蒼髪の生徒に対して恐怖の表情をしながら、絶叫の声が聞こえるだけだった。

〜完〜
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