第1話 はじめに

文字数 576文字

 わたくしたちはどうやら、金を産むようだ。

 「猫ブーム」という風が、このところの人間界で吹き荒れておる。そこらじゅうの商人が、何につけても、あわよくばその「いやらしい風」に乗らんと頑張っておる。いかに巧みにわたくしたちを「利用」するかに心血を注ぎ、広告を打つのだ。そうして卑しいことに、その邪心が産み落とした広告にはすべからく、「猫」であるところのわたくしたちが客演させられている。しかも、ときには単なる映り込みでしかない、まったくの蛇足である場合まで見受けられる。
 この風潮を、わたくしはまことに忌々しき事態だと考えている。なぜならそれらはみな、馬車の手綱をマネキン人形に委ねるかのごとき無責任で、怠慢な態度の産物であるからだ。
 「カワイイ味を足したいんなら、今の世の中、猫出しとけばとりあえずOKっしょ♪」
という堕落しきった戯言が、どこからかハッキリと聞こえてくる……
 ふざけてはいけない!
 時流に乗りさえすればさも安心といわんばかりの右ならえ主義!
 利益第一にわたくしたちを利用する、その愛と誠意の欠如!
 広告画面にとってつけられたわたくしたちの、その所在無げな表情を見よ!
 そもそも、「今の世の中」とは何ごとか!!
 わたくしたち猫は、「いつの世の中にあってもカワイイ」のである!!!

 まったく人間というものは、哀しい生き物であるとしか思えぬ。

 
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