文字数 407文字

 長良川は広い川幅をゆったりと流れる。
 その穏やかで清らかな流れと物静かな響きが、河原に立って見上げる深緑の金華山の雄姿を一層心地よく感じさせる。
 自然が生み出す絶妙のバランスが、地域を特徴づけ、人々を導く。
 幼いころから、金華山の南側に広がる平野の一画で育った俺にとって、川と言えば近くを流れる境川であり、少し遠いが3キロほど南を雄壮に流れている木曽川だった。
 だから中学生までは、金華山の向こう側にある長良川は滅多に会えない特別な川だった。
 高校生になって、長良川は俺の日常の一つとなった。
 岐阜駅から出る市電かバスに乗って、忠節橋という長良川に架かる長いアーチ橋を渡ると、「俺は高校生だと」実感する。
 俺の場所が広がり、日常は大きく変化する。
 新しい場所によって、俺を巡るつながりや関係性のあり方が変わり、そこに小さな場所が新たに積み重なる。
 俺は積み重なっていく場所であり、その積み重ねこそが俺自身なのだ。
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