第11話 日本思想 儒教の受容と展開

文字数 558文字

朱子学

 江戸幕府は儒教、とくに朱子学を重んじるようになったんだけど、これは12世紀に朱熹(しゅき)が創始した学派で、理気二元論(りきにげんろん)と呼ばれる世界観をもっている。社会秩序も理によって構成されると考えるんだけど、こういう朱子学の考えは、身分秩序を正当化するのに都合がよかったので江戸幕府は朱子学を重視したと考えられている。

朱子学批判

 いっぽう、こうした朱子学に批判的な儒学者も出た。山鹿素行(やまがそこう)は『論語』や『孟子』などの原典にあたり、その真意をくみ取るべきだとして古学を提唱し、伊藤仁斎(いとうじんさい)は朱子学の感情や欲望を抑えるべきという考えを批判した。また、荻生徂徠(おぎゅうそらい)は、宋代の儒学者が学問によって聖人になろうとすることを批判し、学問は、生まれついての気質を養うためにあるといっている。

渋沢栄一

 経済活動をするうえで、儒教的な道徳が大事であることを説いたのは渋沢栄一で、彼は『論語と算盤(そろばん)』という本で、「仁をなせば(すなわ)ち富まず、富めば則ち仁ならず」という考えは後世の学者がなした罪であり、実業家は人々が必要とするものを供給したり、便利にすることで生活を豊かにする方針を取る必要があると説いている。

 荻生徂徠の儒学は「経世済民」の学といわれることもあるんだけど、渋沢の考えにも見られるように、儒教は政治面だけでなく経済面でも日本に影響を与えたといえるようだ。

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