妄想:お題がレンタルの狂気

文字数 976文字

 20××年、超高齢化社会となった国では、若者を独居老人へ貸し出す制度が始まっていた。これは、住居費を節約したい若者と、防犯面から独居であることを避けたい高齢者を、人工知能でマッチングさせる制度である。
 防犯面から、若者の人となりは精査され、若者が貸し出されている期間は、廊下に監視カメラが設置される。勿論、プライベートなエリアには設置されず、あくまでトラブルが起きた際に、どちらの言い分が正しいかを判定する為の設置である。

 高齢者側は、カメラの使用料を払い、若者が使う寝具一式を揃える必要がある。もし、客用布団が清潔であれば買い足す必要はなく、それを使用可能。
 高齢者側は、使っていない部屋を有効活用しながら、若者が住むことにより、防犯面で安心度が増す。また、若者は住居費にかける費用なしに、部屋を使うことが出来る。
 マッチング判定する人工知能は、学習が済む迄は政府からの補助金が出た。もし、人工知能の判定が間違っていた場合、次に繋げられる反面、マッチングされた側は不利益を被る。生活に関わってくることだけに、慎重さが求められた。だが、それ以上に必要性に迫られていた面もあった。
 高齢者には、高い場所の掃除や電球交換、日常生活において細々とした出来ないことがある。そう言ったものも、貸し出された若者ならば、比較的楽に出来る。米や飲料、重いものの買い出しも、交渉次第で若者に任せられると言う訳だ。代わりに、高齢者から手の込んだ料理を提供されることもあり、若者側の食費節約になるマッチングもある。当たり外れはあるものの、両者の利害が一致すれば、若者の貸し出しは長期に渡った。

 若者の貸し出し、最大の問題点は「所持している家屋に、部屋を複数持つ高齢者のみ利用可能」であるところだった。また、監視カメラのレンタル代や初期費用など、ある程度の余裕がある高齢者のみが若者を借りられることも問題だった。
 この為、本当に生活にちょっとした助けが必要な高齢者から不満が出た。その類のボランティア活動もあるにはあるのだが、需要に対して圧倒的に供給が足りない。強制的に学生にボランティア活動をやらせる話も上がったが、実現されることなく霧散した。
 持たざる者は、苦労しても得られるものは少なく。生まれ付いて持つ者は、見返りを多く得られる。それを突きつけられる制度でもあった。
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