エッセイコンテスト用ミッション系高校話・後編

文字数 6,379文字

 アドヴェント、それは救い主の誕生を待つ期間。アドヴェント、それは蝋燭を灯しながら、音楽の授業でメサイア(ハレルヤを連呼するアレ)を練習し続ける期間。
 令和日本は、ハロウィンが済んだらもうクリスマスモード。なんなら、ハロウィンが終わるより前からカボチャ系のお菓子は消え、クリスマスアイテムが陳列される。とにかく稼いでおけと言う意思を感じる。

 だが、アドヴェント期間はそこまで長くない。灯す蝋燭は四段階。区切りは日曜日だろうが、学校は休みだからそこは臨機応変に。そもそも、イースターにしろ日曜日が要なキリスト教の行事。礼拝も日曜日。とある教会アカウントが、「日曜は寝ていたいけど礼拝がある……コロナ禍で教会に集まれず、リモートなら移動時間の分眠れる、やったね」とか呟いた位にキリスト教徒的には日曜日大事。なんの説明にもなっていない気もするが、安息日大事。

 で、何で蝋燭灯したんだろうなって、このエッセイを書いて初めて思った。誕生日ケーキの蝋燭も、あれどういう理由なんですかね? きっと良いことある予感がグリーティングなんですかね?
 アドヴェント期間の蝋燭、ドイツ発祥? 救世主を四千年待ったから四本? まあ、とにかく蝋燭を灯し、最終的に四本になった週にクリスマス。良く売られているアドヴェントカレンダーは、十二月の日付だけが書かれたものが多いが、アドヴェント期間は毎年変動する。賛美歌も、主を待ち望んだ後に第一の蝋燭から、第二、第三ときて、最後の蝋燭を灯した週にクリスマス礼拝を行った。

 古より、光は崇拝の対象。創世記でも、始めて創られたのが光。言葉はその前に有ったが、有ったから「光あれ」と言えた。言葉が無ければ、言えなかった。火は悪魔が人間に教えた、悪しき知恵でもある様だが、それはそれ。終末には、何か焼き滅ぼされる様だが、それはそれ。蝋燭に火は灯す。
 
 なお、ロングホームルームでケーキも食べました。多分、クラスならでは。ロングホームルームにケーキを食べて、小学校みたいなクリスマスを楽しむ。流石は滑り止め高校。やっていることが幼い。
 クラスで使える予算をケーキに使う。予算の範囲内で人数分揃えたケーキは美味しくはない。多分、スーパーで安売りされている類のケーキ。果物は乗らず、大量生産して冷凍し、売る店が解凍して売る系のケーキ。いや、毎年出回っているクリスマスケーキも、予め作っておいて冷凍しているらしいが。一度に必要になるから、当日に焼いてなどいられない。

 そう、一度に多くの人数分の料理を用意するのは、至難の業。そして、パンと魚を増やしまくるのは、聖書に書かれた奇跡。金魚を増やすのは立川で起きた何か。
 しかし、何時からクリスマスにはケーキになったのだろうね。
 ケーキ、十二月の家庭科の実習で焼きもした。チキンも焼いた。クリスマスにチキン、これは日本にやってきた白い鬚のアイツが広めたんだろうなってのは分かる。ブルーカーバンクルの事件じゃガチョウを食べるし、米国ではシチメンチョウを食べると言う。どれも鳥類は鳥類だが、ニワトリは日本で普段から食肉として出回っている鳥類である。流石は庭の鳥、ニワトリ。
 オーブンで鶏肉を焼く。こんなの、高校でしかやったことがない。鶏肉はオーブンで焼かなくともどうにか出来る。

 そして、調理実習ではポテトサラダも作った。小学校でもポテトサラダを作った。調理実習の定番なのかポテトサラダ。面倒臭いポテトサラダ。しかし、そこに芋が有れば材料費が減らせるポテトサラダ。ベーコンを入れたらより美味しいポテトサラダ。
 聖書が書かれた時代には、無かったけどねメイン材料。

 そうそう、クリスマスと言えばクリスマスツリー。アイドルがクリスマスツリーになって、クリスマスの曲を歌いもするクリスマスツリー。硝子の靴なんて、元から無かった。元の話はリスの皮の靴だった。
 クリスマスツリー、それはキラキラとしたイメージのもの。令和四年はタペストリーのクリスマスツリーも売られているが、LEDで光るからキラキラする。と言うか、クリスマスツリーが無くても、クリスマス前はあちこちキラキラする。イルミネーション特集とかやる位にあちこちでキラキラしている。
 じゃあ、さぞかしミッション系高校もキラキラすると思うじゃん? しなかったね。田舎だから、キラキラしなかったね。夜にキラキラすると、作物の成長に影響するってクレーム入って点灯不可。今思えば、冬に何を育てていたのだろうか? 百◯貴族でも、冬は畑は休んで(ビニールハウスはあるが)いた気もするが。
 ともあれ、クリスマスにキラキラ出来るのは、観光地か都会のミッション系学校なのだ、多分。

 クリスマス礼拝が終われば冬休み。ただ寒いだけの冬休み。校舎は床暖房で温々なのに、冬休みは寒いだけの期間。だが、校舎は床暖房で温かかった。古い小中学校では、灯油ストーブで温めるしかなく、近い席はやたら暑く、窓際は寒いまま。換気も必要とそれはもう落差があった。
 それに、エレベーターも設置されていた。バリアフリーがなされていた。小中学校の古い校舎では、せいぜい給食を二階に運ぶエレベーターが有っただけ。むしろ、なんでそのエレベーターが有ったのか、謎でもある。

 夏場はクーラーも付けられる。だが、校舎は太陽光を取り入れる様に設計されている為、そこまでは涼しく無かった。なので、スカートばっさばっさする生徒が続出。ミッション系とは言え、田舎の滑り止め高校の子女がお淑やかなお嬢様と言うのは、幻想である。
 昼食の後はゴミが散らかり、体育の後はスプレーで匂いが混ざり合ってとんでもない悪臭が教室に満ちる。風紀検査では、一時的に黒髪にするスプレーを撒き散らし、下校まですら待てないで洗う「メンタルどっかおかしくね? 大丈夫? 何かしらの病気?」な奴も居た。ソイツ、髪を洗ったら洗ったまま、シンクの黒い汚れを放置したままな「どれだけ甘やかされたらそうなるの?」と言う行動もセットだった。

 そして、運悪くそこの掃除担当になりがちだった。そんなに頻繁に風紀検査しないのに。
 なお、床暖房やエレベーターもある校舎だったが、トイレは和式だった。もうすぐ二十一世紀な年に完成した校舎だが、トイレは和式だった。流石にトイレだけは冬は寒かった。洋式は洋式で温める機能が無ければ冷たいが、しゃがむと余計に寒い。それが、和式トイレ。制服を汚さない様にするのも、面倒な和式トイレ。洋風な校舎に見せかけ、ミッション系高校だろうと、和式。今は長期休みに工事して変わった可能性もあるが、初期設定は和式だった。

 教会ってのは、鐘が鳴る。それ即ち時を告げる鐘。学校であれば、始業に放課、チャイム以外に響き渡る。
 で、そのベルタワー。礼拝堂の西側にあり、田舎の中で存在感を発揮していた。他に高い建物がない。近くに、それ以上高い建物が無い。
 そもそも、田舎の建物で高いのは学校。家屋に二階建てはあれど、三階建てはそうそうない。なので、三階以上の高さを持つ建物は学校の校舎である。そして、その校舎より高いのがベルタワーである。

 さて、そんなベルタワー。中は殆ど階段。コンクリート打ちっ放しの壁。コンクリート打ちっ放しな上に冷暖房も無いから、季節を感じる階段。それを掃除するのも生徒の役割。上から下に回転しながら箒で掃く。モップが有ったら楽だったろう。
 「掃除をする為に雇われていた人が居た」と田舎の謎情報網で聞いたのだが、その人は一体何処を掃除していたのか。未だに謎だ。教室は勿論、廊下にトイレも生徒が掃除していた。校庭であれば用務員担当だろうし、あの情報網から来た「掃除をする為に雇われていた人」は存在していたのか。割と謎。

 あと、何故か爆弾予告が有った。有名人も通う様な青山と違ってニュースにはならなかったが、爆弾予告が有った。犯人は捕まらなかった模様。
 高校で起きた事件は、迷宮入りする。名探偵の孫でも居ない限りな!

 懺悔室はありませんが、宣教師舘ならありました。とは言え、学校が出来た頃は宣教師が居ても、二十一世紀に学園の敷地内で宣教師は暮らしてはいない。それなのに、移転の際にちゃんと移設された宣教師舘。
 誰も住んでいないからこそ、見学も可能でした。なので、ロングホームルームの時間を使って見学しましたよ、ええ。
 二階建てなので、階段も登って色々と巡り、階段を降りる際にスリッパが脱げて一階まで先に落ちた思い出。
 普段、何も履かないで猫のモフモフを素足で堪能していたので、スリッパにまるで慣れていなかった。ので、脱げた。上履きって、脱げにくくて良いね!

 因みに、ロングホームルームを使って大学を見学しに行った時も有ったが、講義中に漫画雑誌を読んでいるレベルの学生を発見して終わった。ロングホームルームの使い方、正確は分からないが、自由なクラスだったと思う。

 高校で秋に行われがちな文化祭。ミッション系高校では、文化祭らしきものはやりました。
 元々、戦後に校庭で育てた野菜を売ったのが始まりのバザー。あくまでバザーが起源の、一般開放イベント。なので、生徒は手作りのものを売ります。手作りのものは、家庭科の授業で作りました。コース毎に作るものが違うので、売り物にもバリエーションがあります。そして、当然ながら質の差は否めない。
 農業高校なら、野菜や果物が争奪戦になると言う。何だかんだ食べられるものを安く買えるのは強い。だけど、ぬいぐるみは別に生活する上で必要無いし、他の手芸品も取り立てて必需品かと問われれば肯定出来ない。
 それでも、毎年家庭科の授業製の商品は売られ、終わりが近付くにつれて安くなる。安くなれば、どんな酷い出来の製品でも、糸を解いて布を別の物に錬成し直すのが目当てなら買いである。コロナ禍(初期)で、グラム売りの古着がごっそり売り切れていたので、布目当て勢は何処にでも居る。田舎なら手芸が趣味の人は余計に居る。

 売られた商品がどう扱われたかは謎だが、戦後のバザーから始まった行事は、何十年経っても手作りのものを売る。いや、文化祭でも食べ物を作って売りますけど、細かい部分が違っていた。

 高校三年が意識する受験。歴史は長いミッション系学校だけに、ミッション系大学への指定校推薦枠が多種多様でした。つまり、その全ては把握していない。
 ただ、五十音順にリストが並んでいたので、「正月の駅伝で活躍する大学」が指定校推薦枠にあったのは覚えている。
 しかし、周囲が田畑の学校から東京23区の大学。駅伝選手の寮は東京とも神奈川ともつかない場所にあるが、本局は東京23区の大学。その差は凄い。
 もさい、芋い。そんな田舎から、オシャレな金持ちが住みそうな場所にある大学。メンタル的に、指定校推薦の基準を満たしていても無理だなと思った。如何にも、都会のお金持ちが通ってそうな大学だ。やだな、怖いな~……と、なりました。

 もとい、ミッション系学校で多くの人が想像するのは、あんなキラキラした学校でしょうね。クリスマス前に、クリスマスツリーがキラキラ出来る。それだけでもう、如何にもなミッション系学校。前述した通り、田舎の夜は暗い。クリスマスツリーはキラキラ出来ない。
 そう、物書きの番組で「怖い話をして」と振られて「楽屋が広くなったなと思っていたら、メンバーが三人に減っていたんですよ」と話した人が書いた、青春小説の様な……そんなミッション系を多くの人が想像しているだろう。だが、それも都会の学校だからさ! 田舎の滑り止め高校など、やる気もなきゃキラキラもしていなかったぜ! 買い食いなんて、田舎は店が無いから無理だね! 海に行くなんてもっての外! 

 まあ、放課後にどれだけ遊べるか。そこら辺は親ガチャにも左右されるけど、田舎は店がない。そこは、変わらんのだ。
 因みに、高校のイベントで海にも行きました。しかし、泳がない。そもそも、水泳授業が無いから、学校指定の水着もない。
 じゃあ、何をしに海に行ったかって、地引き網です。バスで太平洋を目指し、お魚をとって、昼ご飯を食べて、バスで学校に戻る。
 何が楽しいんだ、その行事。そう思われるだろう。私もそう思う。

 数時間バスに揺られ、海で網を引っ張り、砂浜でゲリラ豪雨にやられ、ブルーシートを頭上に掲げてバスに戻る。レクリエーションと言うより、むしろ、苦行の類。
 クラスによっては、家庭科室を借りて美味しく食べた。しかし、自分の所属していたクラスはそのまま解散した。
 魚を持ち帰りたい人は持ち帰って良いので、何だか残っていた小さな鰺を貰って帰った。そして、お猫様に献上した。

 しかし、お猫は丸ごとの鰺を食べ物とは認識しなかった。お魚くわえた猫にはならなかった。
 不器用なりに鰺をおろしたら、お猫様はそれが美味しいものだと気付いて目を輝かせた。そう、お猫様の喜びは下僕の喜び。与えすぎは体に悪いが、獲れたて鰺は美味しかった様だ。私は食べなかったので謎だが。

 平和の象徴扱いされる鳩。白い鳩なら聖霊扱い。だが、そこら辺にいる鳩は、大体その糞で嫌われる。
 そんな鳩が、校舎内に入り込んだ事があった。誰も積極的に追い出そうとはしなかった。体育館を鳩は舞い、教員用トイレにも入り込んだ。
 そして、それを見た先生は授業で語ったのだ「閉じ込められた鳩と外にいる鳩が、窓越しに別れを苦しんでいる」的なことを。
 昔の話なので、細かいことは忘れた。だが、先生は二羽の鳩を夫婦と認識し、閉じ込められた側の鳩を奥さんと認識していた。
 平和の象徴たる鳩。駅前にも学校にも居がちな鳩。だけど、そうそう屋内には入らない鳩。
 積極的に追い出そうとする人が居なかったせいか、数日は校舎に居た。何でか知らんが、数日は鳩が居た。
 流石はミッション系学校と言うことか、知らんけど。

 さて、そろそろ卒業式のことを書いて完結設定をしますかね。実は、時々「高校の卒業式に行かなきゃなのに、制服がない」と言う夢をみてしまうのです。悪夢ですね。
 高校を卒業してから、十年以上経ってもみてしまう夢。これは、卒業式の後に毒母がしたことが関わっている。だからこそ、私はそれをここに書いて悪夢を断ち切る。その為に、ここまで書いてきた。

 高校の卒業式は、蛍の光も国歌も歌わなかった。賛美歌を歌い、パイプオルガンの音色が生徒の門出を祝う。そうして、卒業証書や記念品を受け取り、卒業生は学び舎を後にする。携帯電話を持つ生徒が多い時代だから、連絡先を交換していれば卒業後も交流が可能。だからなのか、小中学校の卒業式よりも別れはさっぱりしていた。
 そして、卒業と同時に使わなくなるものは沢山ある。その代表格が制服だ。教科書の類は、勉強して得た知識の確認に有用だ。だが、制服だけは学校に通う生徒だけが纏うことを許された装束。それぞれの学校に所属していることを表す為の服。

 そう、確かに必要では無くなった。だが、卒業の感動も冷めぬ内に、毒母は、わざわざ私の目の前で、見せ付ける様に制服をゴミ袋に入れた。これが、私が意識していまいと、十代の心に悪質な棘として刺さっていた様だ。
 高校の制服は、親戚に同じ高校へ通う子供でも居ない限りは不用なもの。私自身、卒業後に高校の制服を着ようとも考えなければ、夢にみない限りは思い出しもしない。なんなら、スカートが嫌いだから、本当に必要無ければ制服を着たくも無かった。

 なのに、夢にみてしまう。そして、そんな時は寝たのに酷く疲れている。
 だから、その十代の心に刺さってしまった棘を抜き、この作品の完結と共に封印する。それが、私の考えた呪いを浄化する方法だ。
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