第3話

文字数 1,155文字

結城の放った先ほどよりも細く鋭い3本の矢はロボットの頭、首、胴体を狙っていた。
「シールド(障壁展開)」
ちょうど命中するところに分厚い壁が三枚できた。
「は?」
誰もかれもが驚いたようだ。天井に、一人の人影が。
「結城、僕言ったじゃん。捕獲だって」
氷室だった。
「だってよお、隊員がケガしたんだよケガ」
氷室はちょっと目を隊員の方へと向けた。
「まあだいたいわかった。捕獲するぞ」
結城はまたロボットの方へと体を向けた。氷室は両手で何かを包み込むようにしていた。
「もういいか?」「いいよ」
「オブ(物体防御壁)展開、応用、オーブ」
結城がロボットから離れた。そして氷室の手からはさっきまで包み込んでいたのだろう、防御壁と同じような色のシャボン玉みたいなものがふよふよと出てきた。
「パンッ」
それはロボットに当たりはじけた。するとロボットの体を包み込むように大きくなった。
「ギギ、ヶヶヶ、」
障害物があるように、声が小さくなった。それはだんだんと小さくなり、氷室の手へと吸い込まれていった。

「ヒュ~~」
結城のからかいには応じず、氷室はけがをした隊員のもとへ駆け寄った。
「キュア(治癒能力付与)、もう大丈夫だよ」
一度隊員の指が光った。みるみるうちにケガが治っていく。
「すごい!」
周りにいた人は興奮しているようだ。
 
「あ、そうだ。お前らはなんでここにいるんだ?」
我に返ったように中島が二人に聞いてみると、氷室は答えた。
「今日、ほんとは非番なんですよ。だからブラブラしてたらコール鳴って、そしたら結城が近所だから行こうって言いだして、僕はDがいるから(面倒くさいから)行かないって言ったのに無理やり行っちゃうから」
ここまで氷室が言うと結城が氷室の言葉を遮った。
「だってよお、氷室が悪いんだぜ?困ってるやつ見過ごそうとしやがって」
喧嘩が勃発しそうだった。それを止めようとし、木目は言った。
「それより、メーカーはどうしたんだ?氷室はそれを追ってたんだろう?」
氷室は首を振った。
「それが、多分朧なんですよね。だから捕獲しとけって言ったんです」
これには中島も驚いたらしい。
「朧だと?朧の誰だ?」
「まだわかりません。多分アンブラだと思うんですが」
朧とは、今世間を騒がせている犯罪者集団だ。中にはブラッドもミートもいるので防衛維持庁が警察と協力して捕まえようとしている。だが少数精鋭が売りなのでなかなか姿を見せない。ここにでてきたのは結構な前進だった。
「暁にはもう連絡しました。でも皆今散らばっちゃっているんで多分来れないです」
暁は氷室や結城が属する小隊のようなものだ。維持庁の中で1番レベルが高いため、色々な場所に派遣されてしまうのだ。

「じゃ、俺ら本部に戻るから。木目、中島、後は任せた」
そういうと2人は屋根から屋根へ飛び移り、どこかへ行ってしまった。
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