第1話

文字数 2,637文字

日本には二種類の人種がある。

ブラッドイーターとミートイーターだ。
それぞれの意味は、ブラッドイーターは血を喰う者たち、ミートイーターは肉を喰う者たち、となっている。
聞こえは悪いが現にいるのだからしょうがない。
 ブラッドとミートには決定的な差がある。
それは数だ。ブラッドは他の国にはほとんどいない。外国の人からすれば、日本は結構珍しい存在なのだ。

日本にはよくいる、といってもミートのような数ではない。割合として考えてみれば、0,1%くらいだ。だが、そんなブラッドが1割の割合でいる場所がある。そこは、防衛省の防衛維持庁。防衛省の管轄だがそこではほぼ関係なく仕事をしていた。それは昔、独立した会社のようなものだったからだ。

だが、国家にかかわると考えた国が認めた。それがその庁の始まりだった。防衛維持庁の仕事は「ブラッドイーターとミートイーターの共存を支援し、国家の安泰を脅かす者には其相応の対応をし、両者が安心・安全に生活できるよう業務に励む」となっているが大雑把にすると、二つの種が喧嘩をしないようにする、悪事をはたらこうとしていたら容赦しない、ということだ。
 防衛省、防衛維持庁には誰でも入れる。12歳から22歳で犯罪歴が無い人だったら入れるのだ。それも試験がない。だから人数は増えていくのだが下の階級止まりの人ばかりになる。25歳になったら強制的に退役させられるので一定の人数を保っていた。
 防衛維持庁には8つの支部がある。日本全国取り締まらないといけないのだ。本部は東京、支部は北海道、東北、関東、近畿、九州、四国、中国、中部にあった。そこから県ごと、市区町村ごとに管轄が分かれていてそれぞれの役目を全うしていた。
 階級は全部で7に分かれていた。アルファベット順でAからGまで実力順だ。基本Aは5人しかいない。本部や関東支部などの関東エリアにいて本当にやばいときにしか出動要請は出ない。
Bは全部で20人いる。北海道、関東、近畿、九州に3人ずつ、他の支部には2人ずついた。
Cは50人、一県に1人はいる状態で東京と京都に二人いる。Cになってくると下位とのかかわりが増えてくる。
Dは減ったり増えたりしているため正確な数字は出せないがCと比べて明らかに数が増えている。
Eは入庁している人の中で一番人数が多い。主力の実働部隊でここにくるのは当たり前のような雰囲気だ。
Fは真面目に働いていれば必ずといっていいほど上がれる。ここで経験値を鍛えEに上がるのだ。
Gは入庁したて新人で異常なことが無い限り出動することは無い。となっていた。
とはいっても階級を上げるにはどうしたらいいのか。GからDまではポイント制だった。出動したら5ポイント、いい成績を収めれば10ポイント、などなど、たくさんのポイントがありそれを稼ぐほど上の級へ上がることができた。ちなみにFになるには100ポイント、Eになるには500ポイント、Dになるには1000ポイントになれば上がれた。
ポイント制から少し離れるのはCの昇級試験。Cになるには2000ポイントになるか上層部やZ(退役したABC)3人に推薦してもらう必要がある。Bは4000ポイントになっていて上層部やZ、5人に推薦してもらう必要があった。Aになるには8000ポイントになっているか上層部やZ、10人に推薦してもらう必要があった。

今日は定期的に行われる入庁式、ここで新しい仲間が加わるのだ。強面の男が一人、わらわらと集まっている新人に言った。
「これからー、入庁式をー始める―。俺はZの中島だ。ここで基本的なことを教える」
よほど怖かったのか、大体の新人は姿勢を正しおびえた表情で中島のいる壇上を見た。
「中島さん、新人さんたちが困ってしまいますよ。 さて、私の名前は木目。よろしくお願いしますね」
優しそうな男性が話しかけた。少しは緩和されたようだ。
「中島さんでは皆さんを怖がらせてしまうので私が話したいと思います。では、防衛維持庁の危険性から。このグラフを見てください」
木目が指したのは一つの円グラフだった。赤く塗られている方は四分の三を越していた。
「このグラフは今登録している戦闘員全員がもし任務に10回出た場合の生存率を表しています。見てのとおり赤の死亡は80%を超えています。生存は10%ほど。その中で無傷なのは3%くらいでしょうか。この庁に就職したらいつ死んでもおかしくはないのです」
新人たちの中には正直、他の職場とのつなぎとして就職する高卒生も多いのだ。そんな新人たちを見て木目は言った。
「これから5分待ちます。やっぱりここに勤めるのはやめようかな、とか思った人はどうぞここからお引き取り下さい。いつもはここで半分以上の人々が去っていきます」
だが一分たっても誰一人動こうとしなかった。最初の一人は勇気がいるのだ。
 そこで一人、後ろへ引き返す者がいた。維持庁の仕込みだ。
「俺も」「やめよ」
つられるように続々と人がいなくなっていく。こうしていつも人がいなくなっていくのだ。
「5分経ったな。では説明を始めよう。」
階級分けの話や職務の話をし終わり、防衛維持庁独自の話に入った。
「よし、三屋。頼む」
三屋と呼ばれた隊員が、カタカタとパソコンで設定をいじった。すると突然、隊員の頭上に立方体の物体が浮かび上がった。
「何これ」「どういうこと」
困惑する隊員たちに木目は説明を始めた。
「これは君たち一人一人に眠る、我々がギフト、と呼んでいる才能の量だ。この才能を消費して攻めてくる敵、主にロボットとかを倒す。1日で消費した量も戻るので安心しろ」
木目は隊員には言葉遣いが違う、認められたのだ。
「ここから基本的な治癒能力、などを引くとこうなる」
頭上の立方体の一角が欠けた。この治癒能力は個人的に調節可能でこれを増やすほど治癒能力は早くなり、減らすほど遅くなるがその分、違うところにギフトが使える。
「情が無いようで悪いが、このギフトは本当に上に上がるために必要な才能だ。今のうちに量が多い奴を見つけといた方がいいぞ」
確かに個人差があり、大きい人はとても大きいし小さい人は本当に小さかった。
「量が少ない人は基本的に戦闘には向かない。事務仕事やサポートの仕事があってるだろうな。詳しいことはレベル分けしてから説明しよう」
入庁式はほぼ終わってて後は専門用語の知識からレベル分けし、学習することくらいなのだ。
 そのときだった。急に天井が割れ、すさまじい音がした。
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