第11話

文字数 639文字

「‥‥あぁ、付き合ってる。ただ、これを言っても誰にも理解はされないけどな」

「そっか‥‥」

やっぱりそうだった。ショップの店長との会話から薄々気付いてはいたけれど、本人から聞くのは痛いほど心に響く。

今、必要とされているのは私じゃないんだ。

だけど、誰にも理解されないってどういうことなんだろう。アカリちゃんと交際してるのを誰かに反対でもされてるとか?

「俺からも質問いいか?」

「え。なに、黒炎くん」

「再会したとき、どうして抱きついたんだ?」

「それは‥‥」

それ、このタイミングで言っちゃうの?
あぁ、やっぱり黒炎くんは鈍感だ。鈍すぎて、好きな人なのに嫌になる。

黒炎くんは私の本当の気持ちに気付いてないんだろうな。
好き、大好き、愛してる。
心の中では言えるのに言葉にすることはできない。

ねぇ。私が、もしも好きって言ったなら、黒炎くんはどう思うの?

「そりゃあ‥‥仲良しだった幼馴染に再会出来たんだよ! 嬉しいに決まってるじゃん! 私たち、仲良しの幼馴染だったでしょ?」

今の私、ちゃんと笑えてるだろうか。
心の中では泣いているのに、それを必死に隠そうとしている。私は自分に嘘をついているのだ。

「そうだな。でも、流石に恥ずかしかったぞ」

「ごめんね。今度からは気をつけるよ」

きっと今度なんて来ない。
触れてはいけない。だって、黒炎くんには付き合ってる人がいるのだから。

ーーー初恋の人の隣には、私ではない別の女の子がいたのでした。
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