サメの三枚おろし
文字数 728文字
夜のアパートの一室。住居人が不在の闇に光が差した。残業を終えた借手が帰ってきたのである。
照らした光が映し出したもの。それは奇怪な景色であった。床の一部が粘性の液体に包まれて、汚れている。さらにそこには、赤い血痕もあった。
その先にあるのは、ネコと犬の頭。首から下はない。断面から背骨が覗いているそれの目は大きく開き、恐怖を感じさせた。
「…………」
――そう、彼はこの衝撃の景色を目の当たりにしてしまったのだ。リビングに入り、その全てを凝視した彼は、この惨状を前に動けなくなった。怪奇現象と呼ぶには明らかに大規模で生々しいそれは、何かの事件の後なのか。
「――ちゅら子!」
――ふと彼は、我に返った時、あることを思い出した。同棲している恋人のことだ。彼女が無事か確かめるために慌てて部屋中を探し回った。
空きっぱなしになり、中身を食いつくされた冷蔵庫や、謎の粘液に汚されダメになった無数の家電の数々を意に返さず探し続けた果てに、彼は寝室にたどり着いた。
ここだけがなぜか、不自然に無事であった。彼女は眠っているみたいで、ベッドの上に膨らみが見える。
「ちゅら子、大丈夫か!?」
彼女の名を叫びながら、布団をはがした彼――だが、そこにいたのは彼女ではなく……
「ええ!?」
衝撃の、景色だった。いたのは粘液をまとった巨大なネズミザメ。奴は彼に気づくなり、牙をむき――彼にかじりついた。
真っ先に喉を食われ、頭と胴体を切り離された彼。不幸にも彼は、まだ意識があった。人間はギロチンで殺されてしばらくの間、意識があるという。痛覚を失い恐怖の中で死を待つことしかできない生首は、サメが変身する様を見た。
「…………」
サメが変身したのは、同棲している恋人のちゅら子であった。
照らした光が映し出したもの。それは奇怪な景色であった。床の一部が粘性の液体に包まれて、汚れている。さらにそこには、赤い血痕もあった。
その先にあるのは、ネコと犬の頭。首から下はない。断面から背骨が覗いているそれの目は大きく開き、恐怖を感じさせた。
「…………」
――そう、彼はこの衝撃の景色を目の当たりにしてしまったのだ。リビングに入り、その全てを凝視した彼は、この惨状を前に動けなくなった。怪奇現象と呼ぶには明らかに大規模で生々しいそれは、何かの事件の後なのか。
「――ちゅら子!」
――ふと彼は、我に返った時、あることを思い出した。同棲している恋人のことだ。彼女が無事か確かめるために慌てて部屋中を探し回った。
空きっぱなしになり、中身を食いつくされた冷蔵庫や、謎の粘液に汚されダメになった無数の家電の数々を意に返さず探し続けた果てに、彼は寝室にたどり着いた。
ここだけがなぜか、不自然に無事であった。彼女は眠っているみたいで、ベッドの上に膨らみが見える。
「ちゅら子、大丈夫か!?」
彼女の名を叫びながら、布団をはがした彼――だが、そこにいたのは彼女ではなく……
「ええ!?」
衝撃の、景色だった。いたのは粘液をまとった巨大なネズミザメ。奴は彼に気づくなり、牙をむき――彼にかじりついた。
真っ先に喉を食われ、頭と胴体を切り離された彼。不幸にも彼は、まだ意識があった。人間はギロチンで殺されてしばらくの間、意識があるという。痛覚を失い恐怖の中で死を待つことしかできない生首は、サメが変身する様を見た。
「…………」
サメが変身したのは、同棲している恋人のちゅら子であった。