メタモルシャーク・ジ・オリジン
文字数 1,047文字
ここは、九州にある何某川の下流の橋。
深夜のここは、時に自殺の名所ともなる場所であった。
「…………」
一人の少女が、ここに現れる。
貧乏な家系をやりくりしてもらって高校まで行けたのは良かった。
だが三年生になった後からの就職活動はことごとくうまくいかず、バイトとして雇ってくれた回転すし店は業界有数のブラックバイトであった。
家族との関係は、今こそ辛うじて良好に保たれているが、このまま就職に失敗し続ければいずれ悪くなることだろう。
――そう思い詰めた末に彼女は、夜遅くに親の目をすり抜けてここまでやってきたのだ。
「……お父さん、お母さん。ごめん」
――これが、彼女の命を絶つ直前に発した言葉だった。
――彼女は、死んだ。確かに、死んだ。死んだ、は ず だ っ た 。
『……キミ、キミ』
冥府の川にまでたどり着いた彼女、なんと意識はまだ残っていた。
『キミ、ナンデ、ジサツシタ?』
顔を上げた先にいたのは、自分の亡骸が映ったスクリーン。そしてその前にいるのは、一匹のサメだった。
『ジサツスルナラ、キミノオニク、チョウダイ』
――拒否しても、結果は同じだろう。少女はそう思い承諾の意を示した。
それを確認したサメは、意識の断絶した亡骸にかぶりつく。
――瞬間、彼女の魂に、巨大な口が迫った。
ふと目が覚めたら、そこは地上だった。
絹のないずぶぬれの姿で、川のほとりに立っていた。
彼女は周りを見回した。まるで夢の中にいるような感覚が残っていたが、目の前に広がる光景は投身する前にみたものとまるで同じ。川の水は透き通っていて、小石や砂が川底できらきらと輝く。満月は空高く輝いており、その穏やか光が身体を包み込んでた。
『キミの命をくれて、ありがとう』
ふと反響した、謎の声。女性のような声であることは辛うじてわかったが、急な音に対して体は自然と耳を抑え戸惑う。
『ワタシは、キミを食べたサメ。ワタシ、モットイッパイ、お肉を食べたい。だからキミの命と私のイノチを、合体サセタ』
衝撃の方法により、彼女は冥界から呼び戻されたことを知った。
川辺には彼女以外に誰もいない。服もなく、荷物もなく、この場所に放り出されたようでした。しかし不思議なことに彼女は恐怖や不安を感じなかった。
『これからワタシと君で、二人でヒトリ』
「……うん」
『だからまずは――』
二度目の命を手にした彼女がやるべきだと思ったこと、それはたった一つのことだった。
『キミを追い詰めた奴らをみんな、タベチャオウ』
――こうして、令和の人魚伝説が幕を開けたのだった。
深夜のここは、時に自殺の名所ともなる場所であった。
「…………」
一人の少女が、ここに現れる。
貧乏な家系をやりくりしてもらって高校まで行けたのは良かった。
だが三年生になった後からの就職活動はことごとくうまくいかず、バイトとして雇ってくれた回転すし店は業界有数のブラックバイトであった。
家族との関係は、今こそ辛うじて良好に保たれているが、このまま就職に失敗し続ければいずれ悪くなることだろう。
――そう思い詰めた末に彼女は、夜遅くに親の目をすり抜けてここまでやってきたのだ。
「……お父さん、お母さん。ごめん」
――これが、彼女の命を絶つ直前に発した言葉だった。
――彼女は、死んだ。確かに、死んだ。死んだ、
『……キミ、キミ』
冥府の川にまでたどり着いた彼女、なんと意識はまだ残っていた。
『キミ、ナンデ、ジサツシタ?』
顔を上げた先にいたのは、自分の亡骸が映ったスクリーン。そしてその前にいるのは、一匹のサメだった。
『ジサツスルナラ、キミノオニク、チョウダイ』
――拒否しても、結果は同じだろう。少女はそう思い承諾の意を示した。
それを確認したサメは、意識の断絶した亡骸にかぶりつく。
――瞬間、彼女の魂に、巨大な口が迫った。
ふと目が覚めたら、そこは地上だった。
絹のないずぶぬれの姿で、川のほとりに立っていた。
彼女は周りを見回した。まるで夢の中にいるような感覚が残っていたが、目の前に広がる光景は投身する前にみたものとまるで同じ。川の水は透き通っていて、小石や砂が川底できらきらと輝く。満月は空高く輝いており、その穏やか光が身体を包み込んでた。
『キミの命をくれて、ありがとう』
ふと反響した、謎の声。女性のような声であることは辛うじてわかったが、急な音に対して体は自然と耳を抑え戸惑う。
『ワタシは、キミを食べたサメ。ワタシ、モットイッパイ、お肉を食べたい。だからキミの命と私のイノチを、合体サセタ』
衝撃の方法により、彼女は冥界から呼び戻されたことを知った。
川辺には彼女以外に誰もいない。服もなく、荷物もなく、この場所に放り出されたようでした。しかし不思議なことに彼女は恐怖や不安を感じなかった。
『これからワタシと君で、二人でヒトリ』
「……うん」
『だからまずは――』
二度目の命を手にした彼女がやるべきだと思ったこと、それはたった一つのことだった。
『キミを追い詰めた奴らをみんな、タベチャオウ』
――こうして、令和の人魚伝説が幕を開けたのだった。