犬語(2024.9.5)

文字数 317文字

君を見かけたけれど
声を掛けられなかった

話すことは
何もないのだ

あまりにも濃い日々で
語り尽くしたから

ほどほどの関係が
良かったのかもしれないな

手が
触れるか
触れないか
くらいの

興味がありすぎて
とことん突き詰めて
興味は消え失せてしまった

好きが過ぎると
嫉妬や憎悪に変わる
みたいな愛憎劇ではなくて
もっと深い
人間と人間との関り

君も
僕も
孤独で
はじめての
友人だった

たぶん
僕も
君も
孤独が
好きなのだ

だから
ひとりに
戻っただけ

僕は
犬を
飼い始めた

きっと待ちわびているから
急いで帰らなきゃ

君は
僕に気づいて
立ち止まり
右手を上げる

僕も
右手を上げる

そして
別々の道を
いく

語り尽くした
僕らには
もはや言葉はいらない

最近
犬語を
学んでいる

君と
語り尽くして
人間はもういいかな
と思ったから
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み