湖(現代詩手帖新人作品選外佳作)

文字数 372文字

水の流れに分散した感覚が
ただそれが続いていくので
靴の裏の汚れは時期に季節が変わっていく
視線が交錯する街の中の記憶
移ろう誰かの影に願いは虚しく
それが空まで続くなら
階段はなくなっている
顔に飛び散った水滴が
過去を絵具で塗りつぶしていく
誰かは言葉を吐いて
それが、後ろめたさになって
しばらくの間、諦めていた
その日、雨が降った
特に意味もない無意識の日に
透明になっていく花瓶があった
空は曇っていて
霧の中を歩いて行けば
またそれがやってくる
ガラスの中の液体に
静かな願いを投影した
テーブルに散らばった書類は誰のものだったのだろう
もしも同じだったなら
夢の跡に、記号が羅列している
水面は風に波立って
どこまでも続いていくようだ
結局、そこにいることはなかった
だから車に乗って
その光景から離れていく
今はもうない景色が
伝わることはあるのだろうか
その時流れるのは
いつのことだろう

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