残像(現代詩手帖新人作品選外佳作)

文字数 344文字

果たしてコーヒーは宙に浮いて
忘れかけていた事象の先に
禁止を投影するだろうか
静かな湖畔の夢の電卓に
無数の淡い光が現れて
どこか知らない氷の海へ
辺りを照らす植物の群れ
固くなった心臓の音色は
どこかへ引き連れていく子供たちの
残酷で落ち着いた響きを含有する
青い日差しの夕暮れの窓の
水面を後ろ向きに歩く
街灯の赤い夏が
静寂に包まれたテーブルの上で
僅かなアルコールを感じて
夢は次第に霧散して溶けていく
見開かれた風景の辺りに
闇が拭う星座の距離
満たされていく水の入り口は
きっと共有されたデータの集まり
見知らぬ街の幻想風景が
静かに自然の中へと続いていく
それは遠い夜のことだった
月が裏切った微笑の中に
思い出の幻が切り開いた
いくつかの残像が揺らめいていた
過ぎていくのは煉瓦の
懐かしい蜃気楼と
一人で歩く空気の流れだった

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