フランケンシュタインのお嫁さん
文字数 1,550文字
彼の創造主であるフランケンシュタイン博士の雑な手術の影響により、口が上手く回らないフランケンは、これまで喋ることにコンプレックスを抱いていた。
それでもおばあちゃんの言葉で心持ちを新たにした彼は、自分から他者に喋り掛けるよう努力しはじめる。
やはり最初の手術の影響で、表情筋が硬く、笑顔がつくれないフランケンではあったが、それでもおばあちゃんに言われたことを心掛ける。
その甲斐もあったのか、それとも人々が単に見慣れただけなのかは分からないが、次第に他の人間達ともコミュニケーションがはかれるようになっていく。
木漏れ日の中を、おばあちゃんの車椅子を押しながら過ごす、穏やかなひと時。
それがフランケンにとっては、とても大切な時間。
実年齢で言えば、フランケンの方がはるかに年上なのだが、そんなことはおばあちゃんには関係ないのだろう。
フランケンのとんでもなく大きな手と、おばあちゃんの小さくか細い指で交わされる指切り。
フランケンは自らを、フランケンシュタインと名乗っているが、実際のところは、フランケンシュタイン博士が創り上げた人造人間。
それは唯一無二の存在であり、家族どころか、同じ種族ですら、他には存在していない。
そして、フランケンシュタイン博士も、とうの昔に亡くなっている今現在、絶望的に孤独な種族、存在に間違いはない。
それはフランケンのプロポーズなのか。
思いもよらないところで情熱的なフランケン。
表情筋が硬くて、ひきつっているような顔に見えたが、フランケンは嬉しくて、心から喜び、笑っていた。
喜びのあまりフランケンは、車椅子に座っていたおばあちゃんを両手で高く持ち上げた。
それは間違いなくフランケンにとっては至福の瞬間。
だが、フランケンはまだ気づいてはいなかった。
力自慢であるが故に、その異変に気づいてはいなかったのだ。
おばあちゃんの体重が、あまりに軽くなってしまっていたことに。