フランケンシュタインは、おばあちゃんに恋をする
文字数 2,173文字
高齢化が進む一方の日本。
医療の目覚ましい発展は、本来であれば寿命を迎える筈であった人間達を無理矢理に延命させている、そういうこともあるのかもしれない。
そして、そうした高齢者達を介護する人材もまた圧倒的に不足していた。
介護というのは、まさしく重労働で、人間一人の体重を常に支え続けなくてはならない。
異世界から来た移民者達の中にも、そんな重労働にうってつけの、力自慢の人材がいるにはいた。
ただ彼にはいろいろと問題もない訳ではなかった……。
異世界から移民して来たフランケンシュタイン。
本来、心優しい彼は、その巨体と力自慢を活かして、人間達の役に立ちたいと思い、老人ホームの介護スタッフとして働いている。
だが、フランケンのその厳つい見た目は、いくら異世界からの住人に慣れつつあったこちらの世界の人間達と言えども、すぐに慣れるものではなかった。
この仕事を続けていく自信を失っていた時に、フランケンは車椅子に乗った、一人のおばあちゃんと出会う。
自力で車椅子を動かす筋力さえなくなった老婦人をフランケンが担当することになったのだ。
そのおばあちゃんは、フランケンの見た目を怖がることなく、いつも優しく接してくれた。
外の風に当たりたいと言うおばあちゃんの車椅子を押して、施設の敷地内を散歩していた時だった。
その言葉を聞いたフランケンは、両手でおばあちゃんの体をひょいっと持ち上げると、自分の左肩の上に乗せてあげた。
このおばあちゃんは自分のことが怖くないのか? 不思議で仕方がないフランケン。
これまで、傷つくことをおそれて、無口でシャイな性格になってしまった彼だったが、思い余って、ついに聞いてみることにする。
フランケンは、このおばあちゃんなら、自分に同情してくれるだろう、そう思っていた。
だが、おばあちゃんの反応は、フランケンが思っていたのとはちょっと違った。
服のインナーを捲り、自分の胸元にある大きな傷あとを見せる老婦人。
異世界ファンタジーのことをよく知らないおばあちゃんからすれば、フランケンシュタインもまた、そうした移植手術などを受けた人間達と、何ら変わりはないのだろうか。
ただ、他の人よりちょっと回数が多かっただけだなのか。
そして実際に、フランケンシュタインこそは、移植技術の申し子のようなものでもある。
フランケンは気づいた。
自分の出自を、
だが、
フランケンの目からは涙がこぼれ落ちる。
それこそが、例え人造人間であっても、フランケンが人間であることの証。
目の前にいるのは、小さく痩せ細った、か弱い、非力な老婦人。
しかし、その何倍もの大きさではるかに力がある自分よりも、このおばあちゃんはよっぽど強い。
フランケンはそのことを理解した。
そして、その瞬間、フランケンはおばあちゃんに恋をした。