遠い未来の、木漏れ日の下
文字数 1,336文字
――それは遠い未来
もうあれから百年以上が過ぎようとしている。
少女が一人で老人ホーム内の庭を散策していると、木漏れ日の中に、大きな男の影を見つける。
フランケンは口の再手術を受けて、普通に喋れるようになっていた。
ベクター・フランケンシュタイン博士の移植技術をはるかに凌駕した未来の医療。
再生医療を応用した整形手術を行えば、フランケンは傷あとをすべて無くして、普通の人間と変わらぬ姿で暮らすことも出来たのだが、彼はそれをしようとはしなかった。
フランケンはお嫁さんと出会った時の姿のままで、ずっといたかったのだ。
フランケンのとんでもなく大きな手と、少女の小さくか細い指で交わされる指切り。
フランケンは両手で少女の体を持ち上げると、自分の左肩の上に乗せてあげた。
あの時のおばあちゃんよりも、さらにもっと軽い、小さな体を。
今フランケンは、この老人ホームのオーナーになっていた。
数十年前にここを取り壊すという話があった時、貯めていた全財産をはたいて、買い取ったのだ。
いつかきっとまた、ここでおばあちゃんに、自分のお嫁さんだった人の魂にまた会える、彼はそう信じ続けていた。
老朽化が激しくて、建て替えも行ったが、木漏れ日だけはあの時のまま、ずっと変わらない。