第21話 容疑

文字数 455文字

「なんでおれたちが殺したことになるんだい?」
 エリアンが笑った。容疑者にされたのを楽しんでいるようだった。
「この場にいたのはあなた方ですから」
「それじゃあ、すべての殺人犯は第一発見者だ。すごい真理を見つけたものだね、執事さん。探偵いらずだ」
「違うのですか?」
「ぼくたちは殺していません」
 ナナシが弁明した。
「なぜですか?」
 殺していないのが不思議だといわんばかりに、執事は首を傾げた。
「動機がないよ、おれたちには」
「殺人に理由がいるのでしょうか?」
「むしろ、何でいらないと思うのかな」
「そもそもあなた方は、何のためにここに来られたのですか?」
「死の意味を探すためです。それと、猫夫人に頼みたいことがあったので」
 ナナシはそう答えた。影少年は、ことあるごとに目的を口にする。言葉にしておかないと、忘れそうになるのだろう。
「なるほど。それはどちらも無理なご相談ですね」
「なぜですか」
「死に意味はないし、猫夫人は話せないためです」
 物言わぬ猫夫人の死体が、その言葉を裏付けていた。
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