第27話 ティータイム

文字数 400文字

「では、私はこれで失礼させてもらいます。いろいろと多忙な身なので」
 執事はそういってまたあくびをした。隠す気もないようだった。
「失礼って、おれたちは?」
「御自由に」
「容疑者なのに?」
「私は殺されたくありませんので、連続殺人はくれぐれもご遠慮願います」
 傍若無人な命乞いだった。
「猫夫人の死体は? このままなの?」
「そうですね。まあ、小一時間ほどは。とりあえず寝かせておきましょう。あくせくするな、というのがこの館の至上命令ですから」
「度が過ぎるのも考えものだけど」
「ティータイムくらいは、死神も待ってくれる。在りし日の主人の訓戒です」
「死はもう訪れたよ」
「私にはまだですから、起き抜けのティータイムとさせていただきます」
 執事は入ってきたときと同じ扉を開けて、玄関ホールを出ていった。影少年と詩人はその場に取り残された。小一時間ほど待たされる死体は永い眠りをむさぼっていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み