第6話

文字数 1,107文字

 これは私も驚きました。こんな奥技があるとは知りませんでした。これでは四海竜王も敵わなかったのが頷けます。
「さあ、幻の剣は、まだまだあるんだよ。さっさと稽古を始めようか」
 蓮姫は鬼姫と同じく幻の剣をほぼ習得しているのでしょう。
 冷や汗を掻いた武は、数打ちの刀を震える手でいつまでも握っていました。
「武。幻の剣は確かに幻と呼ばれる大技だけど、覚えればそんなでもないんだ。コツだよ。多分……湯築でも使えるはずさ。だから、武は辛いだろうけど惑星で戦ってくれればそれでいいからね。惑星へ行き来できるのは今のところ武だけだから……。私たちはここ地球から全力でサポートをするよ。……何でも言ってくれていいんだよ」

 蓮姫は優しさを含んではにかみながら言いました。
 そうです。麻生がここ存在しないはずの神社にいるのです。
 あ、忘れていました。
 ここには、高取さんと湯築もいます。

 二人は、修練の間で地姫と光姫と手合わせをしていました。
 これからの危機に対して、少しでも強くなろうとしているようです。少し覗いてみましょう。
 湯築は光姫の長刀。地姫の練習用の落雷を幾度も躱しているうちに、後ろについた高取さんが、こちらも練習用の落雷を地姫の頭に落としました。
「えい!」
 なんと、地姫は落雷を斜めに降らし、落雷と落雷で相殺しました。修練の間全体が鋭く発光しました。ここからでも耳がジンジンとします。これには高取さんが、参りました。湯築も光姫に寸止めで長刀を突き付けられていました。
 まるで、勝機がひっくり返るのです。

 何故でしょう?

 何度も何度も。
 来る日も来る日も同じようになると思えてきましたが……。
 それから一週間後のことです。

「ハッ!」
 光姫の長刀に対して、湯築が躱すと後ろから高取さんの落雷が十本同時に光姫へと向かいました。驚いた光姫の身を守るため地姫も落雷を同時に十本降らすと、大地をも切り裂きそうな鋭い音と破裂音と共に高取さんの落雷を相殺しましたが……。
 湯築はその音と光に紛れ、瞬間的に光姫の後方の地姫の懐に入っていました。それから見事に落雷に意識を集中していた地姫の首筋に寸止めですが、槍の穂先をピッタリと付たのです。
 これには、地姫も光姫も大満足でした。
「お見事でした。もう、これで私たちが教えられるものは幻の技しかないですね」
 と、地姫が感心して言いました。
 ここから見ても高取さんと湯築のコンビネーションはお見事でした。どうやら、光姫は幻の技を知らないと見えます。幻の剣とは存在しないはずの神社だけに存在する奥の手なのでしょう。いやはや、遥か遥か遠い時の中。私たちと関わっている間に凄い技を編み出したようですね。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み