第0話 遥か遥か遠き惑星で

文字数 961文字

 竜宮城内 最奥 竜王の間

 冷水、温水、空から流れ落ちるような水が壁面を彩っている間だった。
「姫……? 水淼の大龍とは何でありましょうや」
 魚神の変化の魚の頭をした長老の声に、乙姫は遥か昔に浦島太郎が言った言葉を静かに説明しました。
「水淼の大龍……。それは、この本星にいつの間にか住み着いた。水を呑み干す龍の総称です。あの日、水の失われた地に現れた龍は、その一つだと言っていました。本星を危機に晒し、地球へと侵略をしなければいけなかった。けれども、もう水が失われることは……ない……と、思いたいのです」
「では、きゃつは大勢いると?」
 しかし、定かではないと乙姫は言って皆に頷きました。
 魚神の変化の魚人たちは、大勢います。
 天井から舞う木の葉は、今は秋の枯葉であった。ハラハラと落ちる枯葉は、乙姫たちの沈痛な気持ちを少しは慰めているのでしょう。
「もう……水がなくなることはないと思いたい……」
 乙姫の傍の四海竜王の北龍が具申しました。
「この星に来た武の協力を求めましょう。さすれば私たちで退治してみせましょう」
「姫。それでも無理のようじゃ。まっこと水淼の大龍は厄介な生き物で、恐らくこの地から離れた水晶宮におわす竜王を倒すのが一番かと……本星の水の無くなる前に、まずは地球へと急いで行きましょうや。あの星から剛の者を全て呼び……」
 乙姫は頷いた。
 今度はすぐに決断ができた。
 もう何百年前の自分ではないのだ。
 そう、私は変わったのだ。
「姫様? 何を?」
 魚神の変化の魚人。数人が竜宮城を統べる乙姫の影武者に対し、危ぶんで疑問をぶつけました。
「ええ。これは全て水淼の大龍に打ち勝つためです。この本星をできる限り地球へと近づけるのです……う……」
 影武者は頭痛を抑え、膨大な念で竜宮城のある惑星を地球へと高速で移動させようとしていました。思えば、私たちは渦潮も子供の頃から遊びで発生させていたのです。
 私と分離するのは、たぶんにこれで二度目なのです。
「影武者よ。後は全て任せました。ですが、地球に危害が起きないよう重々気を付けていきましょう!」
「御意! 」
 私は影武者をその場に残して、本星から離れようとしましたが……。 
「地球へと本星を近づければ、味方が渦潮でたやすく来れることでしょう」 
 影武者が微笑を浮かべ言った……。

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