文字数 15,365文字

 五

 「あ、そうそう。私、彼氏できた」
 突然思い出したかのように報告してくるけれど、今日会ってから大分経っていて今までいうタイミングを計っていたんだろうなと分かる。
 ちょっとの寂しさと嫉妬、そしてそれよりは微妙に大きな安心感はこれで一応対等に付き合えるというところからきているのかもしれない。浮気者同士ってことで。
「もう会ってくれない?」という俺に「会ってるじゃん」と言う海ちゃんの笑顔はいつも通り。
「今の彼氏、学生だからこういうお店連れてってもらえないし」
「年下かよー。って学生!?」この前ドタキャンしたお詫びに今日は奮発して六本木の鉄板焼き屋さん「久夛良木」にしたのはいい判断だったかもしれない。「海ちゃんと付き合えるなんて羨ましい学生だな」
「今まで私年下とか絶対無理だと思ってたけど意外にかわいいんだよね。母性くすぐられるっていうか……わー! すっごいお肉柔らかそう」
 鉄板の上で分厚いステーキをシェフが切っていく。まったく腕に力が入ってなさそうなのにナイフがスッスッスッと抵抗なく入っていく。
「飛騨牛さん、ハンパないね」
「飛騨牛さんはポテンシャル高いっすよ」
「やば、ヨダレ垂れた」
 と言って、口の端を拭った右手を俺になすり付けてくる海ちゃんの目のキラキラとした目を見ていると素直に嬉しい。翔子と飯となるとあいつはそれなりの店じゃないと満足しないし、かといってそれなりの店レベルではそれが当たり前になっていてヨダレ垂らして喜んでくれることもない。
「何きっかけ?」
「合コン。これでも私、けっこうモテるんだよ?」
「だと思うわ」
「ん〜! めちゃめちゃおいしっ!! ほら、こんな、こんな柔らかいよ!」
 肉を頬張り一口一口身悶えして満面の笑みになっている。ご飯をおいしそうに食べる人が男女関係なく俺は好きだ。見ているだけで幸せな気分になれる。
「それでね、彼氏が同棲しようとか言い出してんだけど。まだ付き合い始めたばっかだよ? そこはちょっと面倒い」
「若いねー。意外にそのまま結婚とかあるんじゃん?」と適当に受け流す。あれ、俺この話、あまり聞きたくないかも?
 俺は統真の話を振ってみる。
「魚道? それ本気ではしたくなかった感じじゃない?」
 ざっくりと経緯を聞いた海ちゃんは素っ気なく言う。
「そう思う?」
「真面目一筋だったんでしょ? そういう人にとって仕事辞めるなんて一大事だよ。きっと無職なんて肩書きだったら死んだ方がいいくらいだと思ってると思う。ねえね! これわさびだけでもおいしいよ、お肉の味凄いする〜!」
「塩もいいけどわさびも合うよな。でも彼の場合、働くことが生き甲斐というか家計的に働かざるを得な得なかったからなんだけど」
「だからこそ、俺にはこの仕事しかないって思い込んでやってきたのかもしれないじゃん。他にしたいことの欲求を抑えるために。うちのお兄とかそんな感じだもん」
「海ちゃん、お兄さんいたんだ」
「プログラマやってる。でも、そういう人は仕事しかないからこそ頑張れて成功できちゃったりするんだよね」たしかに統真も若くして税理士事務所のエースだった。「そういう人が仕事辞めたいって思ったときにどうするかって言ったら、統真さんみたいにさらに自分の天職だと思える仕事を見つけるしかないんじゃん?」
「じゃあやっぱりやりたいことなんじゃん」
「無理矢理だよ」
「会計士を辞めるためのやりたいこと?」
「わかんないけどね。突き詰めれば大抵のことは楽しいし、やりたいことでもやってみたらつまらんないってこともあるし。ま、私が統真さんにアドバイスするとしたら、何やったって一緒だぞってところかな。てか本当おいしすぎるし幸せすぎるよ!」
 基本的に言っていることは翔子と同じで、魚道は辞めるための言い訳であったと。
「やりたいと思いこむって自分に嘘ついてるわけじゃん。そういうのっていずれまた破綻が生じるたりしないのかな」
 翔子も未だに陸上を辞めたかったとは正直に友達には言えないと言っていた。そのモヤモヤがずっと消化されないままなら、いずれ何かのきっかけで別の形で表に出てきてしまうのだろうか。
「でも私はいいと思う、それで」
「あ、そう?」
「誰だってある程度自分の気持ちに嘘ついたり、嘘までいかなくても誤魔化してることあるもん。要は考え方で、やりたくない仕事振られたときもやってらんねーって思いながらするのか、自分の糧になると思ってやるのかで力のつき方全然違ったりすると思うし」
 そうだったそうだった。本心とは違うときも、それを本心だと思い込んでやるときもあるって翔子と話していたとき思ったんだった。
 思い込むということは、誤魔化すことでもある。
「恋愛だってそうだよ。相手のこと大して好きくなくてもそういうの誤魔化して付き合ってくことあるし。直視すると浮かんできちゃう嫌なことをねじ伏せるためにさ」
 浮かんできちゃう嫌なこと、ねえ。
「あ」
 海ちゃんのクレソンを口に運ぶ手が止まる。
「なに?」
「もしかして、弓削君も気持ち誤摩化してたりする?」
「俺が? 何の気持ちを?」
「弓削君さあ、翔子さんと離婚したいとか思ってない?」
「ンぐッ」
「はははっ! なに今の!? なんか喉から変な音したよ?」
 動揺しすぎー、と言われながらものすごい早さで心臓がドキドキしている。
「表だっては出さないけどそういうことを潜在的に思ってて、それが私と浮気させてる、みたいな私なり分析」
「よくそんな怖い読みするな」
「そこは速攻で否定してよ」顔を近づけてくる海ちゃん。「浮気してるのは黒瀬海のことが好きだからですって」
「……そうだよ」
「言葉弱っ!」海ちゃんはナイフとフォークを置いて視線をすっと落とす「ねえ」
 空気が変わった。いや、変えた。
「じゃあ、悠介君が私と浮気するのはなんで?」
「……何その質問」
「悠介君優しいから性欲の捌け口だなんて言えない?」
「どうしたんだよ急に」
「いや別に?」 
 気まずくなるようわざとそう差し向けている……。
「別にって?」
「別には別にだよ」
「えーなんで怒ってるんだよ」
「怒ってないよ」
「いや、怒ってるし」
「不満もないし、怒っても無い。もういいよやめよ」
 っていう言い方が明らかに怒ってるんですけど……。
「なんだよ、言いたいことあるなら言ってよ」
「じゃあ仮に私が怒ってたとして、原因はなんだと思うの?」
「……」
「……アホらし」
 海ちゃんは心底呆れたようなトーンで小さくつぶやき、それを聞いた俺は小さくため息をつく。
「ため息はやめてよ」
 海ちゃんが何に怒っていて何に不満を感じているかは当然わかっている。でも、俺はそれを望んでいる形で言ってあげることができない。これくらいで精一杯なのだ。
「……性欲の捌け口じゃないよ」
「おそーい。まじ遅すぎタイムオーバーすぎる。しかも予選敗退って答えだしねそれ」
 この後、海ちゃんは何事もなかったようにどうでもいいことをしゃべり始めて、俺もそれに馬鹿みたく相づちを打つ。表面上はいつもの楽しい会話に戻る。そのうちにあまりにも海ちゃんが普通だから、さっきのはなんだったんだろう、会話のエアポケットにでも落ちたのかなんてそんなに深刻に考えなくてもよさそうだなと思えてくる。
 時計を見ると二十一時半を少し回ったくらい。
「そろそろ出よっか?」
 俺が時計を確認したのに気がついたのか海ちゃんからそう言ってくれるので店を出る。
 店を出て俺はとりあえず歩きだしはするが、これからどうすればいいのかわからない。今までであればホテルに行くところだけど、「性欲の捌け口」発言が出た後いつものように誘えるわけがない。
「どうするの?」
「どうしよっかね」
「いつもだったらホテル向かうのに今日は行かないんだ」
「え、じゃあ——」 
 そっちからそう言ってくれるのであれば、と誘おうとした俺の出鼻を海ちゃんはくじく。
「性欲の捌け口だと思われたくなかったから遠慮した?」
「違うって」
「違うってどっち?」
「どっちって?」
「もういいよ。早くホテル行こ」
「いいよ、別に」
「何が?」
「何がって……。俺はセックスしたいためだけに海ちゃんと会ってるわけじゃないから。もしそう思われてるホテル行かなくてもいいよ」
「いいよ。行こうよ」
「……」
「私が行こうって言ってるんだからいいじゃん。関係ないよ」
 俺は馬鹿だから、ホテルに行く。
 全然楽しくなかったしやっぱりいかなきゃよかった、なんてことはなく、海ちゃんはいつも通りエロくて積極的だったし、だから気持ちよかったしセックスできてよかった。
 海ちゃんはいつもの海ちゃんだった。
 しかしその態度に気を許してベッドの上でもう一度さっきのことを聞いた俺はさらに大馬鹿なのだ。
「またその話? もういいって」
「よくないよ」
「私がいいって言ってんの! 悠介君はセックスのためだけに私と会ってるわけじゃないんでしょ? ハイそれでいいよこの話しおしま〜い」
 海ちゃんは床に落ちていたパンツを履いてブラをつけて、それから前に垂れていた髪の毛を背中側に流す。俺に背を向けたままリモコンを手にとってテレビをつける。けれどテレビには目もくれず、スマホをいじっている。
 俺はスプリングがギュインギュインする不安定なベッドの上に立ってズボンを履いてYシャツを着る。いくら激しいセックスをしても常にすべすべの海ちゃんの背中が俺の方を向いていて、後ろから抱きしめてこの場の空気を和らげようにもそれすら許されないオーラが立ち上っている。
 部屋を出てエレベーターに乗っている間も狭い空間にこの次はないなという空気がパンパンに充満している。下がっていく階数のデジタル表示を見ながら、ラブホのエレベーターって途中で乗ってこられたら気まずいって思うけどそういうことって起こらない。プログラム的にそうなってんのかな? とか他愛もない話をしたいのだけど俺はできない。
 結局、ホテルを出て、駅の改札のところまでの約七分間、お互い一言もしゃべらない。店の看板とか妙に気になるそぶりなんかしちゃって間を持たそうとするけれど、だったら声をかければいいんだけど、こうなるとどっちがずっと黙っていられるかの我慢比べみたいになっちゃって沈黙のスパイラル。地獄のような永遠とも思える七分間。
「帰ろっか」
 間抜けなだなと思いながらもそのくらいしか頭に浮かばない。
 このまま会話らしい会話をせずにとりあえず今日はバイバイか、後味悪いなと前を歩いていた海ちゃんが振り返って俺を見る。
「もしも本当にセフレとしてじゃなかったんなら、即答してほしかった」
「……ごめん」
「謝んないでよ。じゃあ聞くけど、セフレ以外だったら私は悠介君の何?」
「……」
「……これも即答できないか。もういい。わかった」
「わかったって……」
「大丈夫、私が神経質になってただけだし、最近ずっと居心地よかったからもしかしたら望んじゃいけないところまで望んじゃったのかも」
 海ちゃんはそう言うと俺から離れて改札に向かう。
 俺は引き止めない。
 新宿で電車を降りて、歌舞伎町を抜けてバッテンィングセンターに行く。千円札を崩してお金を投入して選ぶのは百三十キロ。最初は完全な振り遅れの空振りばかりだけど、一〇球超えたあたりからバットにかするようになりファールチップ連発。十八級目にレフト方向にヒット級の当たりが出たがそのあとは振り後れの空振りで終了。背中の筋が痛くなっただけで何も解消されねえよクソ。隣では大学生くらいの男がバンバンライナーないい当たりを連発しててマジでクソ。
 新宿降りた時点でわかっていたことだけど、一応もう一度スマホで確認。終電無し。タクシーで帰る三千円。
 俺はタクシーの中で海ちゃんが怒っていたことについての俺の考えをメッセージで送る。謝んなくていいと言われたけど謝る。セフレのつもりはないことをもう一度言う。そして俺はここで初めて海ちゃんのことが「好き」で会っているということを伝える。
 でもそんなのはとっくに手遅れなのだ。それにセフレじゃないならなんなの? という海ちゃんの疑問に俺は答えていないし、「好き」ならこれからどうしてくれるの? という問いにも俺は答えを持っていない。
 家について玄関のドアを開けようとしたところで返信が来る。

 
 
 俺はようやくさっき送ったメッセージが、一旦保存し朝冷静になって読み返して送るかどうか判断していれば絶対送っていない類いの内容だったことに気がづく。
「お帰り」
「飲み会だりい。マジめんどいわ」
 聞かれてもいないのに言い訳するって怪しいかな……。
 翔子が俺の脇を通ったとき、普段嗅いだことのない強い香りがする。少なくとも john masters のちょっと甘いあの香りじゃない。
「なんか食べる? 私も今日遅かったからお惣菜買ってきたやつ余ってるけど」
「軽くつまもうかな」
 ソファに座る前に俺はバスルームを行き中を確認する。濡れてない。
 リビングに戻ると、川海老のから揚げとビールが用意されていた。
「お風呂入るの?」
「いや、あとでいいわ。どこ行ってたの?」
「ベジフルビューティーの友達とご飯」
 翔子はキッチンでイチゴのヘタを果物ナイフで丁寧に落としている。
 普段、翔子が夜ご飯行ったときは大抵ほろ酔いになるくらいには飲んで帰ってくるのに、今日はほとんど酔っていない。
 俺は翔子の浮気を疑っている。
 安いシャンプーの匂いと酒を飲んでいないということだけで。
「食べるでしょ? お惣菜だけじゃ体に悪いし」
 イチゴ、バナナ、キウイが盛られた皿を俺に向ける。
「いや、いいわ」
「ここのイチゴおいしいんだから、ほら一口」
 断るのもめんどうで俺は一つもらう。
「先、お風呂入っちゃうね」
 翔子がリビングを出て行くと同時に、俺の視界はこの空間にあるはずの四角くくて黒いものを探している。そしてそれはソファの上に転がっているのをすぐに発見。汚れも目立つし iPhone……も目立つ白い革張りのソファ。
 俺はビールを持って iPhone が転がっている隣に移動するが見ないようにする。見ないけれど視界の端では思いっきり意識していて、左手で取るつもりなのか、俺よ?
 リビングと廊下を隔てるドアが開きそうもないことを確認して手のひらに入れてしまう。
 タッチパネルを撫でてしまう。
 俺は暗証番号を知ってしまっている。
 9220。誕生日の逆。レアな閏年生まれ。
 今年のプレゼントは何にしようかなと考えながらメッセージアプリを見てしまう。
 俺は踏み越えてはいけない一線を超えてしまったことを自覚する。付き合った女の子のケータイチェックなんて今までだって一度もしたことないし、したところで悪い方にしかいかないというのが俺のスタンスだったのに。
 統真のリクナビを見てしまってハードルが下がったのか?
 とりあえず一番直近でやりとりしている橋崎努って奴とのメッセージのやりとりを覗いてしまう。
 ……。
 開いた画面のそこには添付で送られてきた画像が表示されているのだが……。世界の全てが唐突に停止する。 
 再び俺の脳を動かしたのは怒り。
 橋崎努からの変態写真。
 どこかの便所と思われる場所で勃起した下半身を露出した画像とその下に「今日翔子と会えると思ったらマジ我慢できねえ!!」という文字。
 半分くらい残っていたビールを一気に飲み干して iPhone をソファに投げる。
 俺はテレビをつける。映ったのがバラエティ番組で NHK に変えるがニュースなんて全然頭に入ってくるはずもない。消す。今まさにニュースはうちで起こっているんだよ馬鹿が。
 もう一度 iPhone を手にして、その前後に来ているメッセージを確認。
 
 
 
 翔子が送っている。今日、というのは昨日でも明日でもなく今日だ。つまり二月十二日。
 
 
 
 と、橋崎努。
 橋崎努はここでなに一つ間違ったことを言っていない。翔子の口は素晴らしいのだ。どんなに乾燥してる日だってウォータープルーフを塗ったやつみたいにいつだってぷるぷるでちょっとぶ厚めの唇に包まれるだけでイキそうになるのだ。唇と絡みついてくる舌と二段構えの上、あいつは鋭い猫目で見つめてくるのだ。つまり、それを知っている橋崎は、今までにも何回か! 何回も!! 何回も!!! 翔子にくわえさせているってことだ、死ね!
 無意識に拳を握っていて画面を叩き割ろうとする寸前でそうしようとしていることに気がつきやめるのは、離婚になったときこういうのも証拠として必要かもしれないと冷静に考える俺の頭だ。
 ……離婚?
 俺は俺の脳に浮かんだ離婚の言葉に驚く。
 俺は離婚しようと考えているのか? 
 わからない、まだ。
 翔子が他の男のチンポをくわえ、他の男とセックスしているところを想像すると、気が狂いそうで震えが止まらない。怒りによる震えは冷静さを失わせ暴力に訴えようとする。それを上から強引に理性という蓋で押さえ込む。押し寿司みたいに暴力がぎゅっと俺の中で圧縮される。圧縮された暴力は横に広がり圧縮された分だけより強力に解き放ちたい衝動が産まれる。
 俺は立ち上がり IKEA で買ったデザインだけはやたらかっこいいが使い勝手が悪すぎるゴミ箱に空になったビールの缶をぶち込み、冷蔵庫からビールをもう一本取り出して一気に飲む。
 酔えるわけがない。
 自分のことを棚に上げているのはわかっているけど、棚に上げないからといって怒りは消えないだろう。
 俺は見たこともない橋崎努が憎い。
 橋崎努をギタギタにしてやりたい。
 殺したい。
 マジで殺したい。
 殺す。
 橋崎包茎務のクソチンコを切り落とし、それを口にねじ込みセルフフェラをさせ、逆さ吊りにしてメタボな腹にキリトリ線を入れるみたいにして薄皮一枚スッと包丁で線を入れてやるのだ。後頭部の髪の毛を持ち上げてやると、腹の皮が突っ張ってキリトリ線のところからバリリリイィ! と上下に引き裂かれる、てしまえ!! 
「ちょ、何して……るの」振り返ると頭にタオルを巻いた翔子が立っている。
 驚いた顔をしている翔子。は? 驚きたいのはこっちなんだが。
 iPhone を勝手に見てしまったことをまず謝るべきか、それともそういうのはすべて吹っ飛ばして単刀直入に尋ねるか一瞬迷うが、さっきまで俺の手の中にあった iPhone がない。
「手、何!? 手! 血、血だらけじゃない!? その手!!」 
 俺はキッチンに立っていて、左手にはさっきまで握られていた iPhone の代わりに包丁を持っていて、包丁を持っていない右手のひらが血だらけだ。ソファを見ると、そこに iPhone がある。
「悠介……?」
「大丈夫」
 俺は反射的にそう言うが、翔子はひたすら混乱している。俺もよくわからない。なんだ、これは俺が俺自身を傷つけたということか?
 血のわりに傷口は浅く、スッスッと浅い傷がいくつも入っているだけだった。
「……何してたの、そんなとこどうやって、え? ……自分で切ったの?」
「……みたいだね」
「みたいだねって……え、何、どういうこと。……嘘、自殺?」
「違うよ、自殺じゃない。手首じゃないじゃん」
 俺は手首が見えるように翔子に見せる。
「なんで、何何何? よくわかんない。あ、とりあえず救急車」 
「大げさだよ」
 翔子はえーとえーと言いながら電話を探している様子で、教えてあげようかと思ったがソファに落ちている iPhone を自力で見つける。拾ってヒュイっと指で画面を擦ったところで翔子は固まる。
 しばらく画面を見ている翔子が顔を上げて俺を見る。何かを理解したかのようなすっきりした表情だ。
「見たんだ……」
 橋崎努とのメッセージの画面が開きっぱなしだったのだ。
 翔子は崩れるようにソファに浅く腰掛ける。左右の太ももに置いた両手の平はひざの部分でかくんと折れ曲がり天井を向いていて、くつろぎにくそうな体勢だなとかどうでもいいことを思う。
 それから俺は翔子に消毒と包帯をしてもらいながら、橋崎努との出会いと関係を聞く。
 橋崎努との出会いはベジフルビューティーの教室で、最初のうち数名でご飯を行ったりする仲だったのがしばらくして二人で会うようになってそういう関係になってしまったと翔子は言う。
「いつから?」
「三ヶ月前」
 そういう関係になってしまうためには、どちらかがあるいはお互いがアプローチをかけなければそうなってしまわないだろ、と怒りに任せて言ってしまう俺に、翔子は「うん」と小さく頷くだけだった。でも俺と海ちゃんの始まりはなんだよと考えて、あのときはどちらともなくホテルにいったなんて思っていたけど、やっぱりそういうことでは始まらないのだ。よく考えたら俺は海ちゃんとそういう関係になりたいという意思があった、確実に。
「うん、じゃなくて」と言う俺に翔子は橋崎務の話を始める。
 橋崎努は翔子の三歳下の二十五歳で劇団員をしている。
「働いてないの?」
「引っ越し屋でバイト」
「フリーターかよ……。つかフリーターがそんな教室通えないだろ」
「だから働いてるから……」
 問題は今後どうするかなのだけど、俺はそれを切り出せない。切り出せないということは、やっぱり俺は別れたくない? のか?
 でも別れるなんてことにはならないという思いが俺の中のどこかにある。俺がそうであるように翔子だって遊びであり、一時の気の迷いなのだ。それに相手は不安定なフリーターだ。
「で、どうすんの?」
「別れたい、です」
「てか、なんでよりにもよってフリーターなんかと。つかだったら見つかる前に別れてくれよ……」
「……あ、ごめんそうじゃなくて悠介と」
「……は?」
 それ以上の言葉が出てこない。
「……は? どういうこと」
「ごめん、多分もう無理」
「そんなの魔が差したとか気の迷いだって」
「違うの」
「そういうのは浮気だから楽しいんであって、そんなんで真剣に付き合ったってうまくいかねーに決まってんだろ。大体劇団員て……もうちょっと冷静になれよ」
「だって……もう一年以上付き合ってるんだよ!」
 ぃ、一年以上……?
「さっき三ヶ月前って言ったじゃん!」
「ほんとは一年なの!」
「んだよっその嘘!」
「一年と二ヶ月前!!」え、え……一年二ヶ月前って、教室通い始めてすぐってことじゃん……。「その間一度も悠介気づかなかったし疑いもしなかったでしょ? 私最初のうちは遊びな感じだったし……悠介の言う通り気の迷いだったと思う。悪いとも感じてたし。でも会ってくうちにだんだん本気になってきちゃったしそんなの駄目なのわかってるけど……。でも私だって悠介と別れたくなかったから止めようと思ったよ? その頃はむしろバレてほしくて、私けっこうあからさまに夜遊びに行ったするようになった時期あるし、覚えてる? 朝帰りとか。 あれ気づいてほしかったんだよ!」
「気づいてほしかったってそれ色々違くねーか?」
「……」
「なんだそれ、俺が気がつかなかったのがすべて悪いのか? 気がつかない俺が駄目だったのか? はぁ? 意味わからん……」
「……」
 翔子は流す涙を拭わない。頬から伝った涙が尖った顎に集約されてぼたたたと太ももに落ちてソファを濡らす。
 その涙は何が悲しくての涙なのか俺にはわからない。わからない涙を流す人にかける言葉を俺は見つけられない。
「あの時気づいてくれたらもしかしたら変わってたかもしれない」
「落ち着けって。そんな将来もない年下と付き合ってこれからどうすんだよ」
「そういうの関係ないから」
「その頃の男ってのは年上に興味持つ年頃なんだよ。だから仮に翔子が本気だったとしても、そいつは遊びだって。そんなのもわかんねーのかよ」
「わかってないのは悠介だよ!」俺の心臓が止まる。「私はハッシーのことが大好きになっちゃったし、ハッシーも好きでいてくれてるしそうなったらフリーターも何も関係ないよ! 悠介はさ、私の事ブランド志向とか裕福な生活ができないと無理な人間と思ってるかもしれないけど全然そんなことないから。そういうのもう窮屈なの! あなたのイメージの中に生きていくのが辛いの! そういうの抜きで私はハッシーと——」
「ハッシーハッシーうっせーよっ!!」
 それから、俺たちはどのくらい沈黙していただろう。静まった部屋に、壁掛け時計の秒針の音だけが響く。俺たちの関係にカウントダウンを告げるみたいに。
「わかった」
 俺はカウンターテーブルに置いてある車のキーを手に取って玄関に向かう。
「どこ行くの?」
 靴を履いていると翔子がやってきて俺の後ろに立つ。追いかけてはきてくれるのか、かろうじて。
「今後のこと話すにしても今は冷静に話せないから」
「別れるつもり?」
「……そう言ったの翔子だろ」
「‥‥でもそんな傷じゃ」
 今、そこ心配するところかよ。
 玄関のドアを開け外に出る。
 背後でドアが閉まる。しばらく俺はその場でどこに行こうか考える。勢いで出てきてしまったはいいが行く宛は無い。
 いや、違うな。
 閉まったドアが開かないか、期待しているだけなんだ俺は。
 午前零時。
 エレベーターに向かいながら、電話帳から今から付き合ってくれるやつを探そうとして真っ先に思い浮かぶのが海ちゃんなのが辛い。
 ふらっと誘える友達いないな俺。
 エレベーターに乗り込んでB2を押す。エレベーターのドアが開いた瞬間、体が硬くなるほどの寒風が正面から吹いてくる。小走りに車のところまで行ってエンジンをかける。ヘッドライトが付きサイドブレーキを倒し、シートベルトに手にかけ……るのは止めて、サイドブレーキを引き直しスマホを出して電話帳を検索。
 パッパッパッと統真の名前が点滅する。暗闇で液晶の光はまぶしい。二度目のコールでエンジンを切って三度目のコールの途中で統真が出る。
「もしもし」
 統真の声はいつもより低いテンションだった。
「今大丈夫?」
「うん」
 全然大丈夫じゃなさそうな声。俺の話を聞いてほしいのにこれじゃ言えねえ。それどころか、むしろ俺が聞くべき話がありそうなことに若干の面倒臭さを感じつつ尋ねる。
「なんかあった?」
「うん、まあちょっと」
 広い空間にいるみたいに統真の声は反響している。
「今どこ?」
「病院」
 ……てことは、長野じゃなくて、東京か。
「……お母さんか?」
「ついさっき病院から呼び出されて。ちょっとやばいかも」
「ごめんそんな時に」
「今はとりあえず小康状態だから。で、何?」
「うんいいわ。こんなときに言う話でもないし。また出直す」
「僕と知り合って何回電話してきたことある?」見抜かれてる。「こんな夜中にかけてくるとかただ事じゃないってことくらい分かるんですけど」
「まあ、ね」
 統真が笑って、俺もつられて笑う。
「教えてよ。正直今、弓削君から電話かかってきてホッとしたし」
「恋人かよ」俺が笑って、統真が笑う。「今からする話で統真がホッとするとはとても思えないけどな」
「ほら、やっぱり」
「なにが」
「たいしたことない話、ってことじゃないわけでしょ?」
 ……。
「これからずっと付き添い?」
「そうだね、朝までいるよ」
 手のひらに巻かれた包帯に血が滲んでいる。ジンジンと痛み出してきてもいる。今まではアドレナリンが出ててあまり痛みを感じていなかったのかもしれない。
「ちょっと病院行かないといけない用事があるんだけど、今からそっち行っていい?」
「え? 何それ どういうこと?」
「ちょっと怪我しちゃって」
 俺はエンジンをかける。
 統真は病院を教えてくれる。
 スマホを助手席に投げて、アクセルを踏み込み駐車場を飛び出す。
 途中、エレベーターホールから誰かが出てきたのが視界に入った気がしたけど俺はそっちを見ないしバックミラーも確認しない。 


 深夜で空いている目白通りを飛ばし、家から二十分で着く。
 昼間はたくさんの人がいるのに夜はひっそり誰もいなくなる場所は、そのギャップに不気味さが付きまとう。
 受け付け前の長いソファに座っていた統真は、俺に気づいてうなだれていた頭を上げた。
「早かったね」
「お母さん大丈夫なのか?」
「今は落ち着いている……」と言ったきり統真の視線は俺の左手の包帯に気づいて固まる。「何その包帯、すごい血出てんじゃん。あ、そのこと?」
 まだ血は止まっていないらしく包帯が吸収しきれないくらいになっていて絞ったら血が滴り落ちそうだ。痛みも酷い。
「この時間だったら救急かな?」
「ちょっと聞いてくるよ」
 統真は廊下の奥の強く明かりが漏れているカウンターへ行き、二十代前半くらいの看護士さんを連れて来てくれる。俺はその間に包帯を取る。浅い切り傷程度だと思っていたが、一カ所だけパックリ深くいってるやつがある。
「あら、何したんですか?」
「いやあちょっと……」
 手のひらにいくつも切り傷が入るなんていう状況が思い浮かばず、かといって三十手前の男が無意識とはいえ自傷行為、しかも中途半端ってのは恥ずかしすぎるのでハニカんでごまかす。
「とりあえず消毒ですね。ん〜ここだけは縫った方がいいかなあ」看護士さんは中指から手首に向かって入っている傷を指差して言う。「先生に診てもらうんで、診察室へ来てください」
 廊下は静まりかえっていて三人分の足音がよく響く。
 カーテンで仕切られた治療室に通される。治療室は明るくて白い光で溢れている。
「なんでこんなところに切り傷できるわけ?」
 統真が傷を覗き込みながら言う。
「……猫に、やられた」
「弓削君んち、猫飼ってったっけ?」
「……」
「弓削さんちの猫、ずいぶん大きいんですね」
 と言った看護士さんは「先生呼んできますねー」と目も合わせずカーテンの奥へと消える。
「僕のところに電話してきたのとこの傷は関係あるの? あるか」
 俺はうなずき、さっき翔子と俺の間に起こった出来事を簡単に説明しおえると「弓削君がまさかの自傷行為……」と言ったきり統真は黙り込んでしまう。
「だからちげーって。そんな意識ないから」
「無意識に手切るとかメンヘラ気質高すぎでしょ」
「……」
「今どき中学生だってちゃんと手首切るよ?」
 統真はただ呆れていただけで俺を腰抜け呼ばわりしてくれる。
「弓削君ならやるときはバシっと一発で男らしく決めてくれるイメージだったのに、すげーダサイわ。いや死なれたら困るからいいんだけど。んーなんか複雑」
「だからーー」
「ま、おもしろいからいいけどふふふ」
「はいこんばんわ」
 シャーとかカーテンを開けて白衣を来た男性が入ってくる。俺と同じ歳くらいで、鼻の下に髭を生やし彫りが深いワイルドフェイス。
「こんばんわ」
「外で待ってるね」
 統真は医者に会釈して入れ違いで出て行く。
「じゃ、縫っちゃいましょうかね」
 先生は特になにも聞いてこない。さっきの看護士さんは横で処置の準備に入っている。
「ちょっとチクリとしますよ」麻酔をプスプス傷の周りに刺していく。これが痛い。「まあ、人生大変なことありますけど、肩の力抜いてやっていきましょうよ」
 と軽い口調で諭されてしまう。
「あの、別にこれ、自殺とかじゃないっすよ」
「自傷行為じゃないと、傷害になるんで返って面倒ですけど?」
「いやだから猫に……」
「……色々あって気づいたらやってました」
「傷見ればわかりますよ。自分で左手で切ったようにしか見えない傷跡ですもん。弓削さん左利きですよね?」
「……」
「はい、終わり」正味十分もかからなかったと思う。「今後抜糸までは毎日消毒にきてください」
「はい」
「ありがとうございました」
「お薬ご用意しますので、外のソファでお待ちください」
 看護士の女の子がドアを開けてくれる。
「ありがとうございます」
「お大事に」
 統真は最初に座っていた場所に戻っていて、俺は隣に腰を下ろす。そして統真のお母さんが手術を受けたことを知る。
 銀座で俺と飯を食った半月後、統真や医者の説得でお母さんは手術を受ける。
 手術で大腸以外にも癌が転移していることが分かり、本当はまた手術で摘出しないといけないのだけどその体力もなく、また術後も芳しくなくて手術から十日後の今日、正確には昨日の午後十時過ぎ、統真の母、加奈子は昏睡状態に入った。
「あの、弓削君にお願いなんだけど」
「何?」
「できればお見舞いしてもらえる?」
「お母さんとこ?」
「うちの親、全然友達とかもいないし親戚付き合いとかもしてないから誰もこないんだよね。で、このままだと最後まで僕だけって、ちょっと寂しいかなって。こんなの頼むの変なのわかってるんだけど」
「俺の方こそこんな時にいきなり電話して付き合わせちゃってるし、迷惑じゃなきゃそれくらい全然いいよ」
「面会謝絶中だから身内ってことで」
 病室は三階のナースセンターから一番手前の二人部屋。
 部屋に入ると規則正しい電子音が響いている。手前のベッドは空いていて、お母さんはカーテンで仕切られた窓側だ。
 統真がカーテンを開けると酸素マスクをした女性が目をつぶっていた。真っ白で痩せている。
「さっきちょっとだけ意識戻って苦しがったんだけど薬効いたのかな」
 統真が出してくれたパイプ椅子に俺は座り、統真は背もたれのない丸椅子に座る。
「で、なんでこんな夜遅くに電話かけてきたの? 手に傷までつけるようなことって?」
 俺は統真のお母さんを挟んで、これまでの経緯を説明する。
「なるほどねー。離婚するの?」
「やっぱ離婚かな」
「まだそのつもりはないんだ?」
 布団からはみ出していたお母さんの右手を統真は取って中に入れる。
「わからん。でもあっちが別れたいって言ってんだからそういうことになるしかないかなあ。実感わかねーけど」
「前触れとかもなかったんでしょ?」
「俺は鈍感なんだよ」
「そういうの鈍感な方が僕はいいと思うけど」
 統真はそう言ってくれるけれど、翔子曰く俺がそういうことに敏感であれば、翔子のアピールに気がつけて手遅れにならなくて済んだかもしれないのだ。
「家はどうするの? 賃貸?」
「分譲。財産分与っつーの? どうすりゃいいんだろ。お前、そういうの知らない? 知らないよな」
「会計士士と弁護士は違うから」統真はたち上がってクリーム色のカーテンを開けた。「都内の割にここ星がよく見えるんだよね」
 血の気のない顔に外の光が当たり青白く光る。それは深い森の中に立ち込める霧の向こうに広がる湖のような、見とれてしまうような美しさがあった。これまでも統真はここでお母さんと二人、夜を過ごしたことがあるのだろう。 
 俺たちはお母さんが寝ている傍でぶつぶつととりとめもないことを話す。ロビーで話せばいいのだけど、俺も統真も部屋を出ようとは言わなかった。不思議な話だけど、居心地が良かった。
「僕はお母さんと別れるし、弓削君は翔子さんと別れるわけか」
 三十分くらい経っただろうか、統真がそう口にした。
「……俺はともかく、お母さんはまだ、そんな、縁起でもないこと——」
「わかるんだよ。今日峠を超えることが出来たとしてもそう長くはないって」
「おめーがそんなこと言ってどうすんだよ、冗談でも言うなよ」
「僕にはわかる」
 統真は俺を強い目で見つめる。
「僕は、お母さんと別れる……」
 それは統真の覚悟だった。
「……魚道の勉強、どうするんだよ」
「……学校とか行ってる余裕もなくなっちゃったし、ちょっとわかんない」
 お母さんのことが終わったらまた勉強も出来るし長野にもいけるだろと言おうと思ったけどやめた。俺はお母さんが回復することを願うしそうなると信じる、ここでは。
 俺は軽い気持ちで浮気していたけど、翔子は本気だった。いつか俺と別れる、別れを切り出したいと思いながら俺と一緒に暮らしていたならそれは気の毒だ。ここにきてそう思えるくらいには冷静になれた。
 一年以上前から付き合っていてしかもそれが本気だったってことは、その間、誕生日もクリスマスもあったけど、翔子はその時どういう心境だったのだろう。
 俺は翔子のことを何も知らなかったし、何も分かっていなかった。一番の間違いは、わかっていないのにわかっていると思い込んでいたことだ。わかっていると自信を持ってしまっていたことだ。
 時計を見ると午前三時を回っていて、統真はいつの間にか壁によりかかって静かに寝息を立てていた。俺は二人を起こさないように部屋を出てロビーのソファに移る。
 離婚することになったことを海ちゃんに言ったらどうなるだろう。どうなるもない。「だから?」と言われたとき俺は海ちゃんと結婚を前提に付き合う気があるのか? ない。これまで通りセフレでいてくださいと言いたいだけ。傷心の俺をあのエロい体で慰めてほしいだけだ。
 俺は俺の家とは大違いの黒く硬いロビーのソファで寝てしまって、朝六時に統真に起こされたとき体中が痛い。
「朝ご飯でも行く?」
「いや、いいわ。お母さんは?」
「変わらず」
 統真がおごってくれた缶コーヒーを飲み干し、また近いうち連絡すると約束して病院を後にする。
 さて、これからどうしよう? 
 俺の人生。
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