第4話

文字数 1,139文字

 「うわ、降ってきた」
 「えー、傘ないよ」
 「とりあえず、あっち入ろう」
 留守がちの親を持つ彼は、だけど家の人から決して人を家の中には入れてはいけないと言われているそうで、自分の家の鍵も持たされていなかった。いつも親が帰宅するまで外で時間をつぶしているらしい。
 今日みたいな突然の雨の日はこれまでもあったし、その時もこうして軒先にふたり並んで座って、好きなゲームの話をしたり、ぼーっと過ごしたりしていた。
 「・・・…は、さ。好きな人、いるの?」
 「ん?」
 クラスの話の続きかと思った。
 「あー、宮田さん、が、いるらしいってさ」
 許せ宮田。私は誰々が好きとかいう情報で本当っぽいのは君しか知らなかったんだ。濁せばバレないよね。たぶん、女子中知ってるなら男子とてもしかしたらかもしんないし。
 「いや、宮田じゃ、なくって…・・・」
 おう、早くもネタが尽きそうだ。どうやって元のゲームに戻ろうか。
 「おれが好きなの」
 「おお、そうだったのか!」
 おめでとう宮田!
 「それならそうと、はやく言ってあげた方がいいんじゃない?」
 「え……?」
 「いやだから。宮田さん、好きなんでしょ?」
 「……なんで。違う。宮田が好きだって言ってるのはクラスの連中だけで、違うんだ」
 ……おおおおお?
 「でも、クラス中宮田さんがって、言ってるし。宮田さんいい子だよ。そう思わない?」
 「それは……うん、わかってる」
 「なら、いいじゃない」
 「よくない。おれが好きなのは、きみで、」
 えええええと? 好き?  私を?宮田が彼を好きなのに?
 「私も嫌いじゃないよ。それに、宮田も、堀田も、折部もみんな本当はいい人なのに。なんでクラスの連中はいじろうとしてくるんだろうね。ありがとね、私もいじめられてるのに。そんな事言ってくれるの君しかいないよ」
 「……ちがう……」
 「そんなことないって~♪ 実はすっげぇいい奴だって、私は君を知ってるもん」
 「だから、」
 「宮田さんがね、君を好きなんだよ」
 ……言ってしまった……。
 「君を宮田さんが好きだって、言ってるのに」
 「でも、」
 「そんな事言ったら、宮田さんがかわいそうじゃない?」
 好きって、私は彼は好きだと思う。世に言う好き。つき合ってる人たちが持ってる好きっていうのは――
 「でも……おれは……」
 「君は、宮田さん嫌い?」
 「……そんなこと…………ない……」
 「うん。うん。へへ。でも、うん。気持ちは、うれしい。かも。ありがとね」
 「うん……」
 「雨、あがんないね?」
 彼は薄暗い空を見上げていた。青に空が変わるまで、私も隣でぼぉっと、ただただ空を見ている事に――必死だった。

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