第1話
文字数 1,908文字
私の名前は、松武こうめ。この新興住宅地に住む、専業主婦です。
毎月第一木曜日は、月に一度の当学区子供会主催の資源回収日。回収する品目は、新聞紙、広告、段ボール、本、雑誌、アルミ缶、牛乳パック、古着などで、指示された通りにまとめ、自宅前の道路から見える場所に出す、というルールになっています。
第三金曜日にも、新聞販売店主催の資源回収がありますが、引っ越した当初、その日に出したところ、早速、斜め向かいの葛岡さんのおばあちゃんのチェックが入りました。
「松武さん、ちょっといいかしら~?」
「あ、葛岡さん。おはようございます」
「今日って、資源回収の日だったかねぇ~?」
「はい、昨日○×新聞さんの回収のお知らせが入ってました」
「そのことだけど、これから資源回収は、子供会のほうに出してくれな~い?」
「ええ、それはいいですけど、何か理由でも?」
「回収した資源はお金に換えて、子供会の費用になるんだよ~。どうせ出すなら、そっちに協力したほうが、ねぇ~!」
なるほど、そういうことなら、我が家としてもご協力させて頂くことに異論はありません。
「分かりました。では、これからはうちも、そうさせて頂きますね」
「分かったら、今すぐ片付けて~。出しっぱなしだと、持ってかれちゃうから~!」
「え? でも今回は、もう…」
「そのまま、家の隅っこ置いとけばいいでしょ~! 言われたら、すぐにやる! ほ~ら!」
何だかな~と思いながら、言われた通り、今出したばかりの資源類の束を自宅に運び入れ、再び表に出ると、門の陰から葛岡さんのおばあちゃんが、まだこちらの様子を伺っていました。
おそらく、私がちゃんと片付けるか、見張っていたのでしょう。彼女に向かって、ぺこりとお辞儀をすると、まるで私のことなど見ていませんでしたとばかり、くるりと背を向け自宅の中に戻って行くおばあちゃん。
何軒かのお宅は、第三金曜日にも出していて、絶対に子供会のほうに出さなければいけないという決まりはありませんが、おばあちゃんのおっしゃるように、折角なら少しでも子供会費のお手伝いになればと思い、極力第一木曜日の回収に出すことにしました。
もっとも、第三金曜日の回収を強行すれば、面倒くさいことになるだけですから、敢えて波風立てるのも…というのが、正直なところではあります。
その日は第一木曜日。朝から雨が降りそうなお天気で、ひとまずは資源ごみを出したものの、しまおうか、どうしようかと、草むしりをしながら、回収車が来るのを待っていました。
回収時間は特に決まっておらず、夕方に来ることが多いものの、まだ大丈夫と高を括っていると、午前9時頃に回収されることもあり、油断出来ません。
警報が発令されない限り回収はありますので、少しの雨ならビニールを掛けておくのですが、そこそこの雨量になると、新聞や段ボールが水を吸ってしまい、回収する業者さんに申し訳ない気がして、次回に回すようにしていました。
特に、こういう雨が降りそうで降らない日は悩むところ。降り始めて、片付け終えたところへ、回収車が通り過ぎて行ったこともあり、我が家のようにカーポートに屋根がないと不便です。
そうこうしていると、角を曲がって、葛岡さんのおばあちゃんが歩いて来ました。私の姿を見つけると、いつになくご機嫌なご様子で話しかけて来ました。
「こんにちは~。草むしり? せいが出るねぇ~」
「お帰りなさい。お出かけでしたか?」
「うん、ちょっと実家までね~」
「そうですか」
「それがねえ、実家の弟の嫁さんがねぇ~…」
不覚にも捕まってしまった私。こうなると、当分の間、おばあちゃんのマシンガントークが続きます。
本日のお題は『実家』でした。
彼女のご実家は、市内中心部の繁華街に近い場所にあり、かつてはお商売で繁盛し沢山の使用人さんもいて、とても裕福なお家だったというのがご自慢で、今も頻繁に実家へ通っているそうです。
ご両親はもう何十年も前に亡くなり、後を継いだ弟さんも十年以上前に亡くなって、今はその奥さんと息子さん世帯が住んでいらっしゃるのだとか。
実家へ行けば上げ膳据え膳で、何から何まで弟嫁さんがやってくださり、気が向いたときに、月に一度はお泊りに行くのが恒例で、自分専用のお布団もあるのだと、嬉しそうに話すおばあちゃん。
弟嫁さんにとって、おばあちゃんは『小姑』に当たるわけですが、弟嫁さん自身、すでにご高齢のはずです。
義両親もご主人も他界され、世代交代してもなお実家に入り浸る小姑。百歩譲って、親兄弟のお仏壇にお参りするのは良しとしても、私ならアポなしお泊りは勘弁して欲しいと思わずにはいられません。
毎月第一木曜日は、月に一度の当学区子供会主催の資源回収日。回収する品目は、新聞紙、広告、段ボール、本、雑誌、アルミ缶、牛乳パック、古着などで、指示された通りにまとめ、自宅前の道路から見える場所に出す、というルールになっています。
第三金曜日にも、新聞販売店主催の資源回収がありますが、引っ越した当初、その日に出したところ、早速、斜め向かいの葛岡さんのおばあちゃんのチェックが入りました。
「松武さん、ちょっといいかしら~?」
「あ、葛岡さん。おはようございます」
「今日って、資源回収の日だったかねぇ~?」
「はい、昨日○×新聞さんの回収のお知らせが入ってました」
「そのことだけど、これから資源回収は、子供会のほうに出してくれな~い?」
「ええ、それはいいですけど、何か理由でも?」
「回収した資源はお金に換えて、子供会の費用になるんだよ~。どうせ出すなら、そっちに協力したほうが、ねぇ~!」
なるほど、そういうことなら、我が家としてもご協力させて頂くことに異論はありません。
「分かりました。では、これからはうちも、そうさせて頂きますね」
「分かったら、今すぐ片付けて~。出しっぱなしだと、持ってかれちゃうから~!」
「え? でも今回は、もう…」
「そのまま、家の隅っこ置いとけばいいでしょ~! 言われたら、すぐにやる! ほ~ら!」
何だかな~と思いながら、言われた通り、今出したばかりの資源類の束を自宅に運び入れ、再び表に出ると、門の陰から葛岡さんのおばあちゃんが、まだこちらの様子を伺っていました。
おそらく、私がちゃんと片付けるか、見張っていたのでしょう。彼女に向かって、ぺこりとお辞儀をすると、まるで私のことなど見ていませんでしたとばかり、くるりと背を向け自宅の中に戻って行くおばあちゃん。
何軒かのお宅は、第三金曜日にも出していて、絶対に子供会のほうに出さなければいけないという決まりはありませんが、おばあちゃんのおっしゃるように、折角なら少しでも子供会費のお手伝いになればと思い、極力第一木曜日の回収に出すことにしました。
もっとも、第三金曜日の回収を強行すれば、面倒くさいことになるだけですから、敢えて波風立てるのも…というのが、正直なところではあります。
その日は第一木曜日。朝から雨が降りそうなお天気で、ひとまずは資源ごみを出したものの、しまおうか、どうしようかと、草むしりをしながら、回収車が来るのを待っていました。
回収時間は特に決まっておらず、夕方に来ることが多いものの、まだ大丈夫と高を括っていると、午前9時頃に回収されることもあり、油断出来ません。
警報が発令されない限り回収はありますので、少しの雨ならビニールを掛けておくのですが、そこそこの雨量になると、新聞や段ボールが水を吸ってしまい、回収する業者さんに申し訳ない気がして、次回に回すようにしていました。
特に、こういう雨が降りそうで降らない日は悩むところ。降り始めて、片付け終えたところへ、回収車が通り過ぎて行ったこともあり、我が家のようにカーポートに屋根がないと不便です。
そうこうしていると、角を曲がって、葛岡さんのおばあちゃんが歩いて来ました。私の姿を見つけると、いつになくご機嫌なご様子で話しかけて来ました。
「こんにちは~。草むしり? せいが出るねぇ~」
「お帰りなさい。お出かけでしたか?」
「うん、ちょっと実家までね~」
「そうですか」
「それがねえ、実家の弟の嫁さんがねぇ~…」
不覚にも捕まってしまった私。こうなると、当分の間、おばあちゃんのマシンガントークが続きます。
本日のお題は『実家』でした。
彼女のご実家は、市内中心部の繁華街に近い場所にあり、かつてはお商売で繁盛し沢山の使用人さんもいて、とても裕福なお家だったというのがご自慢で、今も頻繁に実家へ通っているそうです。
ご両親はもう何十年も前に亡くなり、後を継いだ弟さんも十年以上前に亡くなって、今はその奥さんと息子さん世帯が住んでいらっしゃるのだとか。
実家へ行けば上げ膳据え膳で、何から何まで弟嫁さんがやってくださり、気が向いたときに、月に一度はお泊りに行くのが恒例で、自分専用のお布団もあるのだと、嬉しそうに話すおばあちゃん。
弟嫁さんにとって、おばあちゃんは『小姑』に当たるわけですが、弟嫁さん自身、すでにご高齢のはずです。
義両親もご主人も他界され、世代交代してもなお実家に入り浸る小姑。百歩譲って、親兄弟のお仏壇にお参りするのは良しとしても、私ならアポなしお泊りは勘弁して欲しいと思わずにはいられません。