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文字数 638文字

 そんな事を思っていると隣のおじさん、

「お前が現れた時の為に、いつも持ち歩いていたんだ。あははは。いや、たまたま今日は持ってきたのかな?あはは」

と笑いながら、足元のボックスを持ち上げようとして下ろした。
 俺は何だ?と見た。
爆弾ではなさそうだなと安心した。
この間の物騒な話から、そう想像してしまったのだが。おじさんが持っているのは、どう見ても電動工具のプラスチックのケースだった。
よくホームセンターで見るものだ。
 成る程、流石元技術者と、妙なところに感心してしまった。

「これはな、俺の大発明の完成品だ。凄いぞ」

と、おじさん日本酒を自分のグラスに注いで飲んだ。大丈夫かなぁ〜、とも思ったが。
多分、酒豪なんだろう。酔っているフリかも知れない。
会社勤めは大抵、ほろ酔いを楽しむと聞いた事がある。シャキットしろと言われれば、直ぐに素に戻れると親父が言ったような。
尤も嘘だろうが・・・。
 俺は話を合わせて、

「何ですか?爆弾じゃないですよね」

と言うと。出したのはノコギリだった。
日本のやつではなく、片刃の西洋ノコギリだ。
 ジョッキを持つような持ち手で、直角三角形の形をした片方だけ刃が付いているやつだ。
長さは50センチも無いだろう。
所謂、日曜大工、DIY?の工具だ。
 確か西洋と日本では、引くとき切れるか押すとき切れるかで違うと聞いた。
どっちがどっちかは忘れたが。
大抵素人は、気になどしないだろ。
 俺が手に持とうとすると、

「触るな危険だ。あはは、尤もスイッチが入ってないから、大丈夫だがな」
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