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文字数 771文字

「スイッチ?」

 確かに、ジョッキの持ち手な様な所の上に、スイッチが見えた。
これで電動ノコギリなんだ。
う~ん、絡繰が解らん。
 ひょっとして、この人いかれているのかな?と、ちょっと背筋が寒く感じた。
 すると、

「これは共鳴振動カッターだ。ノコギリに見えるが、それは偽装だ」

「ギソウ?」

「そうだ。カッターなんか持ってたら、警察の職務質問の時、説明が大変だが。ノコギリならああ、日曜大工の工具か、で済むだろう」

と笑顔で言った。
 参ったなこの人、何やら企んでいる様だ。
やっぱり爆発するのかな?
俺は何とか、この人の話から脱出したくなっていた。何をするかは知らないが。
多分、この人は警察に捕まるだろう。
その時、俺が知り合いだと思われたら。
あらぬ疑いをかけられる事も考えられる。
 さて、どうやって逃げるかなと、俺は頼んだつまみを精力的に食べ始めた。
 すると、最悪な事をおじさんは宣った。

「こいつで、東京タワーを倒す」

「ブッ!」

思わず俺は吹いてしまった。
 笑ったのではない、びっくりしたのだ。
これは笑い話なのか?
兎に角、俺は惚けた方が良いなと、

「あはは、無理ですよ、おじさん。
このノコギリで東京タワーを倒すなんて。
何年も掛りますよ。スポンサーでもいるなら別ですけど。それに何で東京タワーなんですか?
あなたを裏切った、会社の柱でも切った方が、よっぽど建設的ですよ」

と言った。
 俺はペースを上げて飲んでしまったので、
かなり酔いが回ってきていた。
いつになく饒舌だった。
 すると、おじさん聞いてもいないのに、

「俺の名は菱川だ。バカには分からぬか。
お前は、何になろうとしている?仕事だ」

と聞いたので、

「はい、あなたの様な技術者です」

と答えると。

「あはは、そうかそうか。これは運命だな。
あはは、では教えてやろう。
これはノコギリではない、説明したな。
ノコギリというのは・・・」
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