第12話 熊殺し

文字数 373文字

八作は、熊の息が絶えるのを見届けるとその熊を担ぎ寝床に戻る。
その面持ちは非常に渋い顔をしていた。
すでに周りは雪で薄っすらと覆われていた。


次の日村に帰り、熊を村人に見せた。
村では
「熊を倒すなんてすごいじゃないか!」
「これで安心して山に入れるな」
「八作、お前はこの村の誇りだよ」
ともてはやされた。

屋敷にも連絡がいったのか、旦那様から
『本当に熊を倒してしまうとは。お前のさらなる武功として周りに伝わるだろう。
そうだ熊殺しの八作というのはどうだ。周りの武家にも八作のような家臣がいて羨望を受けるだろう。
山籠もりは終わったが、すでに時期は冬。雪が解けたらまた屋敷に戻ってくるといい』
といった文面の書状が届いた。

周りからは絶賛の嵐。


だが八作はどうであろうか。
親を殺された。
復讐を考えていた。

でも生きていた。
ただ熊は生きていたのだ。

なぜ私は熊を殺したのだろう。
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登場人物紹介

八作:武家屋敷に努める小姓。正式な武士ではないものの周りでは有名な強者として知られている

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